研究課題
挑戦的萌芽研究
クロモゾームペイントは、平成25年度は、幹細胞特異的マーカー遺伝子Plzfがコードされている第9番染色体と、前駆細胞特異的マーカー遺伝子Kitがコードされている第5番染色体の2つの染色体について解析を行った。また、同時にDPAI染色を行って、ペリセントロメリックヘテロクロマチンとの位置的相関を検討した。サンプルは、セルソーターにより純化した細胞と組織切片の2種類の状態のものを用いて染色条件設定を行った。その結果を、Kit陰性の幹細胞とKit陽性の前駆細胞で、それぞれ4種類の染色体局在パターンに分類した。現在、サンプル数を増やし検証中である。また、平成26年度に行う予定であったPlzfとSall4のクロマチン免疫沈降実験を、将来本研究の進展のため必要不可欠なPlzfとSall4の複合体解析のための準備とともに、同時並行してすすめた。クロマチン免疫沈降実験のための、レンチウイルスベクターを用いたTag付きPlzfとSall4 の各cDNA発現ベクターを作成し、これをまず293T細胞での正しい発現を確認した。Plzf蛋白の一部が蛋白分解を受けていたが研究全体の進捗に障害がある程度ではなかった。また、精巣幹細胞株(GS細胞)を用いたクロマチン免疫沈降実験系を確立するために、2つのヒストン修飾酵素に対する抗体を用いて様々な実験条件を検討し、ポジティブコントロールのES細胞と、目的とするGS細胞、それぞれ5x105の細胞より安定してクロマチン免疫沈降ができる条件を設定終了した。現在、次世代シークエンサーによるポジティブコントロールES細胞のクロマチン免疫沈降実験の解析を行い、その結果を過去の報告と比較することにより実験系樹立の成否の確認を行っている。
2: おおむね順調に進展している
中心的実験が軌道にのった状態である。クロモゾームペインティングは、あまり報告がない実験方法論であるため、シグナルを得るのに相当苦労すると予想していたが、一応初年度にクリアなシグナルを得るところまで来た。また、予定では平成25年度に行う予定であった3C法を平成26年度の研究へと変更し、平成26年度に行う予定だったクロマチン免疫沈降を平成25年度に繰り上げた。その理由は、後者の実験は技術的に既にかなり確立された方法論で、実験条件検討に関する情報も多々得やすい、さらにその技術は,3C法にかなり応用可能であるからである。従って、クロマチン免疫沈降を平成25年度に確立するほうが効率良いと考えた。従って、総じて研究はおおむね順調に推移していると考えている。
クロモゾームペイントについて、染色法は樹立されたので、今後Ngn3がコードされている染色体第10番、GFRα1がコードされている染色体第19番プローブを購入し染色を行っていく。染色体の位置取りは、染色体自身の3次元的位置と、4つの染色体の相関関係、テロメアやDAPI fociとの位置関係を中心に評価を行っていく予定である。クロマチン免疫沈降を行うために、精巣幹細胞株(GS細胞)に、平成25年度に作成したTag付きPlzfとSall4 cDNAを、レンチウイルスを用いて導入し、内在性のPlzf, Sall4はsiRNAを用いてノックダウンする予定である。クロマチン免疫沈降には、抗HA抗体を用いる予定である。ヒストンに比べ転写因子のクロマチン免疫沈降は沈降されるDNA量が少ない事が予想されるが、スタートの細胞数を精原幹細胞は増やす事が容易なので特に障害とはならないと考えている。得られたPlzfやSall4結合領域をゲノム上にマップしたのち、精巣分化の視点からの意義付けを行う。また、これら転写因子が結合する遺伝子について、以前既に取得しているRNA sequencingの結果とも照らし合わせ、PlzfとSall4gがどの遺伝子の発現にどのように関わっているのか考察する。最後に、クロマチン免疫沈降実験により抗HA抗体の沈降効率や特異性が評価できるので、その後3C実験を開始し本年度中に次世代シークエンサーを用いた解析を終える予定である。
旅費や消耗品を予定より安価に購入できたため。細胞培養等に必要な試薬の購入にあてたい。
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Current Pathobilogy Reports
巻: 2 ページ: 1-9
Development
巻: 140 ページ: 3565-3576
10.1242/dev.094045