研究課題/領域番号 |
25670100
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
仙波 憲太郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70206663)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脱分化 / 乳腺幹細胞 |
研究概要 |
分化した乳腺上皮細胞を乳腺幹細胞へ脱分化させるとされるSLUGとSOX9の2つの遺伝子のレンチウイルスベクター一過的遺伝子発現システムを構築した。両遺伝子をP2Aペプチド配列で挟む工夫を施し、1つのベクターで2つの遺伝子を効率良く発現できるよう工夫した。これとTet-On-Advanced発現vectorのウイルスを、マウスMammary epithelial cell(MEC)に共感染させ、その後にDoxを添加し、SLUGとSOX9の誘導発現を蛋白レベルで確認することができた。一過的に発現誘導させたマウスのMECを3週齢マウスのcleared fat-padに移植し、2ヶ月後に摘出したところ、効率は低いが乳腺の再構築が確認され、先行論文の再現性を確認することができた。これらのvectorシステム、および分化した細胞から乳腺幹細胞を作出する技術を分子生物学会でそれぞれ発表した((5)-xx, (5)-yy)。ところで、低効率の問題はvector導入と脱分化自体の低効率に由来すると考えた。マウスではドナーとしてTet-On-Advanced全身発現マウスが存在し、これを用いることで1番目の問題の解決になりうる。しかし、本研究の目的はヒトの細胞での脱分化による乳腺再構築であり、1番目のような解決が不可能である。そこで2番目の解決として効率化因子の同定を目指した。文献情報やパプリックな発現データベースから候補遺伝子を抽出し、それぞれの発現ベクターの精製まで終了した。また、遺伝子のgenomeへの挿入が癌化を引き起こす恐れがあるため、ゲノムに挿入しないepisomeベクターの発現システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した計画の7段階のうち①一過的遺伝子発現システムの構築,②マウスでの脱分化効率の検討,⑥ウイルスを用いないベクターの開発をすでに終え、さらに③免疫不全マウスを用いたヒト乳腺構築技術の確立、の技術としてマウスの腎臓皮膜移植テクニックを習得したこと、④ヒト乳腺上皮細胞脱分化の必要因子の探索、および⑤効率化因子の探索・効率化システムの構築のための遺伝子の抽出とそれらの発現ベクターの精製を終えている。また別の予算で乳腺幹細胞性を評価または濃縮するためトランスジェニックレポーターマウスを作製したが、これを今後スクリーニングへ活用できる可能性がある。これらから、おおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
④ヒト乳腺上皮細胞脱分化の必要因子の探索、および⑤効率化因子の探索・効率化システムの構築、を達成するため、乳腺幹細胞への脱分化を効率化する因子をいくつか同定したい。まずは本年度選定した脱分化効率を促進する可能性のある遺伝子について評価を行う。そのために、上記トランスジェニックレポーターマウスが予想通りに幹細胞の検出が可能かどうかの検討を行う。検出可能ならばこの初代培養細胞を利用し、迅速かつ効率良くスクリーニングする計画である。また、脱分化させた後の分化には何らかの必須因子が存在し、マウス体内でのヒトの乳腺の再構築には繊維芽細胞が必要であることが知られている。そういったsupportiveな細胞の選定や飼育の最適化、さらには間質・ホルモンなどの検討を行う。また、⑦様々な細胞からの乳腺幹細胞導出の検討においては、マウス毛包細胞などからの脱分化の検討を行うほか、iPS細胞やSTAP細胞から直接乳腺幹細胞へダイレクトレプログラミング可能かどうかも検討したい。マウスでのこのような知見や実験のノウハウを積み重ねることによって将来的にヒトの細胞の脱分化の成功につなげたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用を計画していたSPF実験施設の動物環境の維持に問題があり、研究が遅れた。 上記の施設の問題は解決したので、今後、必要なマウスの購入や、遺伝子改変マウスの繁殖、解析に使用する。
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