a)スクリーニングにおける問題点として課題であったMECへの遺伝子の導入効率をさらに改善するために、これまでのウイルスベクター系ではなく、piggyBacトランスポゾンのベクター系を開発した。さらにこの導入に最適なelectroporation技術を採用し、細密な条件検討を行うことで高効率に遺伝子発現ベクターをMECへ導入することが可能となった。 b)上述の導入法の改善の他、前年度までにも行ってきた脱分化後に幹細胞をメンテナンス可能な長期培養技術やレポーター細胞のマウスの繁殖・MEC細胞分画法の技術向上、及びより収量が得られるようなプロトコルの改善がなされた。 c)文献情報や各種データベースから任意に選別された脱分化誘導候補遺伝子の発現ベクター113種類を個々にMECに導入したが、レポーター細胞のEGFPレポーター蛋白質の強い発現を示す遺伝子は存在しなかった。この結果から、選別した遺伝子の中に単独では脱分化活性が含まれないこと、多数の因子の組み合わせが脱分化の効率化に必要な可能性、など様々な仮説を立てられることができた他、レポーター細胞の極めて低いbackgroundレベルを確認することができた。一方iPS化4因子を同時に導入したものでは高いEGFPの発現を示したことから使用している細胞は幹細胞化の検出には問題ないと判断された。MECをiPS化したものではcleared fat-padに移植しても乳腺の再構築が起こらなかったことから、初期化まで誘導してしまうと分化能力を失うこと、多能性幹細胞を乳房組織環境に入れただけでは組織の再生は起こらず、何らかの分化プログラムが必要なことが明らかとなった。
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