免疫応答の誘導に不可欠なT細胞と樹状細胞による抗原特異的接触が起こるリンパ節の傍皮質領域は、ケモカインCCL21を産生する特殊な間質ストローマ細胞である細網繊維芽細胞(FRC)のネットワークにより支持されており、免疫システムの時空間的、機能的な中心としての役割を担う。この傍皮質FRCの発達とCCL21産生に至る分子機序は、通常の免疫応答のみならず、さまざまな病態形成との関連からも極めて重要な問題であるといえる。本研究はその分子過程の解明に向けた基盤づくりを進めることを目的としている。 マウスのリンパ節ストローマ細胞に高発現することが明らかになったいくつかの遺伝子に関して、哺乳類細胞発現プラスミドベクターやレトロウイルスベクターにcDNAを組込み、リンパ節由来ストローマ細胞株に安定導入した。その結果、一部の発現細胞株については腫瘍壊死因子TNFaやリンフォトキシンなどの炎症性サイトカイン刺激を加えた場合に、対照群と比較して炎症性ケモカイン発現の変化が認められるものがあった。これは、ストローマ細胞に何らかの性状変化がもたらされた結果、炎症性刺激に対して反応性が更新した可能性が示唆される。しかし、残念ながら今のところCCL21の発現が誘導される条件は見付かっていない。一方、リンパ節のストローマ細胞の多くが発現するPDGFRbのプロモーター下においてCreERT2/EYFPを発現し、誘導的遺伝子改変を行なえるマウス系統の樹立に成功したことから、生体内におけるリンパ節ストローマ細胞のネットワーク構造やサブセットの系譜追跡などの解析が可能となった。
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