研究課題/領域番号 |
25670102
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
中村 桂一郎 久留米大学, 医学部, 教授 (20172398)
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研究分担者 |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 准教授 (00258401)
林 篤正 久留米大学, 医学部, 助教 (20341357)
金澤 知之進 久留米大学, 医学部, 講師 (50529518)
東 龍平 久留米大学, 医学部, その他 (70569516)
都合 亜記暢 久留米大学, 医学部, その他 (80569517)
力丸 由起子 (西 由起子) 久留米大学, 医学部, 助教 (90368960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 線維芽細胞 / 間葉組織 / 平滑筋 / 次世代電子顕微鏡 / FIB/SEM / ブロック表面SEM観察 / 連続精密切削画像 / 三次元超微形態再構築 |
研究概要 |
ICC(Interstitial cells of Cajal;カハール細胞)を含む 消化管壁の間葉細胞群(線維芽細胞および線維芽細胞様細胞)の個々の細胞の微細三次元構造と組織構築を明らかにすることを目的として、次世代電子顕微鏡FIB/SEM(Quanta 3D FEG, FEI)をもちいた三次元微細構造解析を順次進めている。本年度は特に、小腸絨毛上皮直下の上皮間葉境界面に平面的に拡がるsubepithelial fibroblastsをターゲットとして解析を進めた。1990年代に同定され、研究代表者を含むいくつかの研究グループにより解析が進められているsubepithelial fibroblastsについては、機能相により変化があるとされるものの、結合組織除去法で作製された試料のSEM観察や免疫組織化学により、個々の細胞は扁平であり、周囲に複数の突起を出した星形をしていること、そして、それらが突起の先端で連結してネットワークを形成し、全体として粗いザルのようなシートを構築していることが報告されている。しかしながら、より厳密な固定法により保持され、2~20nmというこれまでの超薄切片(50~100nm)の半分以下の切削厚での観察を可能とするFIB/SEM連続微細構造観察(FIB/SEM tomography)法をもちいることにより、TEMで観察されたこれら細胞の突起は、我々が精嚢において報告してきた間葉細胞に似て、想像以上に広く拡がる薄い膜状であることが見え始めている。 並行して分担者らにより、泌尿器・生殖器系臓器、腱・骨、皮膚真皮、歯根膜、歯髄、髄膜、中枢神経組織、その他の臓器・器官、組織における間葉細胞の解析が進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画で対象とする細胞については、それらの拡がりは予想以上に広範にわたることが明らかとなった。これまでのところ、FIB/SEM tomography法で効率良く解析するために、切削の方向性、範囲、厚さ等の最適化を模索・検討している。さらに得られた連続画像をこれまでのAMIRAによる画像解析法で検討しつつ、時間と労力を最適とする解析方法について問題を提起し、他の研究者、学会との連携も視野にいれながら検討・開発を進めている。 また、泌尿器・生殖器系臓器では膀胱、精嚢の平滑筋組織近傍に分布する同様の間葉細胞群についてSK3,PDGFRα等に対する抗体をもちいた免疫染色による蛍光顕微鏡レベルの解析が進行中であり、このうち本研究の基盤となった精嚢平滑筋組織の機能解析については現在論文を投稿中である。さらに、この他の代表的間葉細胞(線維芽細胞)の例として、腱骨付着部における正常および断裂腱再生時の同様の細胞についてはMuscles Ligaments Tendons Journalに論文掲載が受理され、また、皮膚真皮の正常および病態における間葉細胞の形状と動態について2つの論文を作成中である。 なお、本研究計画でもちいるFIB/SEMは,2011年に本研究チームが中心となって文科省私学助成を得て、所属する大学の施設(久留米大学電顕室)に設置されており、以後、電顕室専属の研究分担者らの取り組みにより適正に稼働している。電顕室は学内共同研究施設であるため、他の研究者の使用も多いが、使用料として本研究分の消耗品経費を負担し、使用時間を確保している。また、FIB/SEM tomography法は、形態研究分野において世界的に注目されている新規研究技法であり、次世代電顕としての可能性を探るとともに、研究分担者らはいくつかの研究組織において招待講演を行い、さらに日本顕微鏡学会における研究部会の創設に貢献している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って研究を進める。Subepithelial fibroblast networkの解析が若干予定よりも遅れているものの、画像取得法を確立することにより、解析対象となる連続画像が効率良く取得できるものと期待される。 得られた画像は莫大なデータを内包しており、学会においてもこれらの解析方法が重要であることが指摘されるようになった。当面は現在代表者らが主としてもちいている三次元解析ソフトであるAMIRA/AVIZOを活用した解析を行うものの、このような状況を踏まえ、今後、新たな画像ビッグデータの解析法の開発にも積極的に取り組む予定である。1つの可能性としては、CTやMRI等の放射線診断で一般的に使用されるDICOM形式画像の画像処理技術の導入等を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、全額使用を予定したものの、経費削減ができて、結果的に残余金が発生した。 残余金は次年度において、薬品または消耗品購入に充てる。
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