研究課題
挑戦的萌芽研究
チャネルロドプシン(ChR)は微生物型ロドプシンの一種であり、クラミドモナスやボルボックスといった緑藻類が持つ光駆動型の非選択的陽イオンチャネルである。他の微生物型ロドプシンと同様にChRもまた7つの膜貫通へリックス(TM1-7)からなる構造を有する膜タンパク質である。特に第2へリックス(TM2)近辺に存在する5つのグルタミン酸残基(E)はChRファミリーにおいて保存されており、先行研究からこの極性アミノ酸残基がイオン透過性に関係すると考えられている。例えば、ChR2のE97 をアラニン(A)に置換することで光電流の強い抑制が認められている。また同部位をアルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)に置換した改変体を用いてGd3+をブロッカーとした実験においてはGd3+の抑制効果が減少する。これらのことからE97が陽イオン透過において重要な部位であり、Gd3+の高親和性結合部位であると共に陽イオンの脱水和に必須の部位であることが示唆されている。単細胞緑藻類の一種Mesostigma viride由来のChRのひとつ、MChR1は、クラミドモナスやボルボックス由来の既知のChRと異なり、上記5つのEのうち、ChR2のE97に相当する部位のアミノ酸残基がAに置き換わっている。そこで、本研究ではMChR1においてはGd3+の高親和性結合部位が欠損しているという仮説を検証した。さらに、MChR1におけるChR2のE97に相当する部位であるAをEに置換した改変体を作製し、MChR1及びChRと比較することで、ChR2のE97に相同するアミノ酸残基がGd3+の高親和性結合に必須であるとする仮説を検証した。その結果、MChR1においては、Gd3+の高親和性結合部位が欠損していることが確認された。この部位がCa2+透過性に関与している可能性について、平成26年度の研究において解明する計画である。
2: おおむね順調に進展している
MChR1の構造機能解析の成果について、論文準備中にある。また、本研究において同定されたGd3+高親和性結合部位が、Ca2+透過性に関与している構造であるという新たな仮説を立てることができた。本仮説を平成26年度において検証することにより、「Ca2+を透過しないチャネルロドプシンの開発」という、当初の目的を達成できる見込みが高い。
平成26年度の研究においては、Gd3+高親和性結合部位が、Ca2+透過性に関与している構造であるという新たな仮説を検証する研究を実施する。この結果に基づいて、「Ca2+を透過しないチャネルロドプシンの開発」や「Ca2+透過型チャネルロドプシンの開発」を推進する。
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