研究課題
小腸・大腸の領域境界は、発生過程での複雑な過程を経て完成し、生後は変化することなく維持される。しかしながら、成体において各々の上皮細胞が区域依存性に形態・機能的固有性を維持する機構は十分理解されていない。本研究では、これまで腸管上皮研究を進めてきた申請者がその技術と知見を基礎とし、消化管上皮境界維持機構、中でも特に小腸-大腸境界における上皮境界維持機構を解析することを目的とした。このためにまず、さまざまな薬剤とデバイスを組合せた処理をおこなうことで、簡便で再現性を有する新規の大腸傷害マウスモデルを構築し、これに成体由来小腸上皮細胞を移植することに成功した。得られた異所性小腸移植片の粘膜修復過程や移植片内上皮細胞における分子発現の経時変化について、組織学的解析・分子生物学的解析を加えた結果、成体由来の培養小腸幹細胞が大腸組織内で上皮組織を再生可能であることがわかった。また移植後4週あるいは4ヶ月の時点においても、小腸移植片が小腸型吸収上皮細胞、パネート細胞など小腸に固有の分化細胞を維持し続けることも示された。このことは、マイクロアレイを用いた移植片上皮での発現遺伝子解析の結果でも支持された。さらに移植片上皮組織は、形態的にも小腸に特有な絨毛-陰窩構造を形成することも見いだした。これらの知見は、胎生期小腸上皮細胞を移植した際に見られる上皮可塑性を示すデータとは明らかに異なるものであり、したがって、成体における上皮境界形成に間充組織からの誘導シグナルは不要であり、小腸および大腸の固有の上皮形質や機能は上皮内因性にプログラムされる可能性を示す重要なものと考えた。
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Genes & Development
巻: 28(16) ページ: 1752-1757
10.1101/gad.245233.114