本研究では、24 年度に共同利用が始まった京大次世代低炭素ナノハブ創成拠点を利用して、半導体加工技術を応用したX 線1 分子動態計測法の開発(観測プローブ・チャンバー開発)を行った。代表者はX 線1 分子計測法を用いて、イオンチャネル開閉構造変化の1 分子動画計測を行ってきた。この方法では金ナノ結晶を観測プローブとしてイオンチャネル蛋白質に固定し、放射光白色X 線を観測光としてチャネル分子の構造変化を金結晶からの回折点の運動として動画記録する。本研究では、計測法にとって克服すべき課題である、様々なサイズの金ナノ結晶を作製してプローブサイズが蛋白質の運動に与える影響を検証可能にすること、サイズの小さなナノ結晶からの弱い信号でも計測可能なノイズの少ない観測チャンバーの開発を実現することを目的とした。 半導体フォトリソグラフィー技術は、基板上に光硬化するレジストを塗布し、フォトマスクによって光照射範囲を限定することで、任意のパターンを基板上に作製することができる。本研究ではこれを観測プローブである金ナノ結晶の作製およびX線散乱ノイズの少ない観測チャンバー開発に応用した。その結果、数十nmサイズの観測プローブの基板上でのパターンニングに成功し、またマイクロメートルオーダーの溶液層を持つ低ノイズ観測チャンバーの開発が可能であることを見出した。結果をCHEMINAS30および生物物理学会・生理学会に報告した。本挑戦的萌芽研究で明確な研究の端緒を得た本課題はさらなる開発を期して新学術領域研究に採択され、継続されることとなった。
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