研究課題/領域番号 |
25670108
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 祐一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20532980)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 温度感知 / TRPチャネル |
研究実績の概要 |
(全体構想) 我々は36.5℃の体で恒常性を保って生きています。そして、時に火や氷雪を「熱い」「冷たい」と感じて回避します。本研究では、我々が温度を感じ取るメカニズムを分子構造のレベルから明らかにします。 (具体的目標) 温度を感知するイオンチャネル(Thermo TRP)の温度を感知するドメインの結晶構造を高解像度で解き、そのタンパク質ドメインの温度特性を熱力学的に解析します。Thermo TRPのイオンチャネルとしての機能を電気生理学的に温度変化と対応させて解析します。温度という「共通のパラメタ-で解析軸を統一」して結晶構造-タンパク質-分子機能とシームレスな解析を行い、「イオンチャネルの温度感知機構」の普遍的な概念の確立を目指します。 本年度は、上記目的を達成するため、本年度は、TRPサブファミリーに対して、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた発現機能解析実験を行い、温度に依存した活性の測定を行った。報告されたTRPV1の結晶構造を基にして変異体を作成し機能解析を行った。 温度を感知するに対して重要な働きを持つドメインとして知られる、TRPV1とTRPM8の細胞内コイルドコイルドメインの蛋白質の発現、精製を大腸菌を用いて行った。TRPM2、およびTRPM3のコイルドコイルドメインの蛋白質を大腸菌を用いて発現、精製を行い、結晶を作成することに成功した。回折実験では高分解能の回折像を得られた。TRPA1の細胞内アンキリンドメインの蛋白質に対して、大腸菌を用いて発現精製を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発現系を用いての機能解析に成功しており、今後の研究進展の礎となる解析法の確立に成功した。発現系を用いて蛋白質断片の発現精製に成功しており、今後の研究進展の礎となる解析法の確立に成功した。温度感知に重要な働きを有するドメインの蛋白質結晶を得ることに成功し、回折像を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
TRPチャネルが温度を感知できる機構を解明するため、学際的な方法を取り入れて解析を行なう。本年度行った、発現系を用いた機能解析と、温度受容特性を決定するドメインのタンパク質結晶を利用して、 (1)回折実験を行い、構造を解析する。(2)部分構造の詳細からチャネル機能を理解すること目的に結晶構造を元にした機能解析を行う。(3)細胞内ドメイン蛋白の熱力学的性質でイオンチャネルの温度受容特性が決まるのかどうかを知ることを目的に、温度上昇に伴うタンパク質の二次構造変化と、その温度閾値・温度依存性を解析する。(4)膜貫通領域のチャネルゲートとの連携を知るために、他のチャネルとのキメラチャネルを作成し、機能解析を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では平成26年8月までにTRPV1の構造を解析し、平成27年3月までに温度感知機構に対して蛋白質レベルでの解析を行い、研究成果の取りまとめを行う予定であった。しかし、平成26年7月に、他の研究グループからTRPV1の構造が報告されたため、構造情報を基にしたTRPVファミリーの機能解析を行う必要性が生じ、その解析を優先した。そのため、蛋白質レベルの実験のやむを得ない遅延が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬購入に(500,000円)。実験補助員の雇用費に(1,100,000円)。国内学会参加旅費に(100,000円)。その他印刷出版費に(100,000円)。
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