研究課題/領域番号 |
25670110
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
久留 一郎 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60211504)
|
研究分担者 |
三明 淳一朗 鳥取大学, 医学部, 講師 (40372677)
池田 信人 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50620316)
白吉 安昭 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90249946)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 疾患iPS細胞 / LQT1 / HSP70 |
研究概要 |
1. LQT1型iPS細胞の心筋分化誘導とその特性解析 先に樹立したLQT1型患者由来iPS細胞株をヌードマウスに移植して、3胚葉を有するテラトーマ形成能を指標にスクリーニングする。その後in vitroでの心筋分化誘導を行い、最も効率の良い株を2株選択した。並行して健常者の血液からT細胞を得で、センダイウィルスに搭載した山中4因子を感染させることで、iPS細胞コロニーを複数得た。これらのLQT1型iPS細胞と健常者由来iPS細胞を心筋へ分化誘導した。心筋分化誘導の原理としてはヒトES細胞で確立した2段階の分化誘導法を用いた。分化誘導心筋を用いて、RT-PCRおよび免疫染色法による未分化マーカーの測定、心筋分化マーカーの測定を行った結果、Nkx2.5, MYH6, KCNQ1, TBX5, TNTおよびKCNH2の発現を認め、心筋への分化誘導が完了していることを確認した。さらに、パッチクランプ法を用いて、拍動する心筋に対しての電気生理学的特性の解析を行い、健常者由来iPS細胞からの分化心筋と比較検討した。自動能性活動電位を測定したところ、最大拡張電位には差が無いが、活動電位持続時間の有意な延長を認めた。そこで、活動電位持続時間の延長のイオン電流機序を検討したところKvLQT1電流であるIKS電流は予想通りにLQT1型iPS細胞由来心筋で有意に減少していた。一方で、Na+電流ならびに、Ca2+電流に関しては両群間で差を認めなかった。 2. LQT1型患者由来iPS細胞からの各種心筋細胞の可視化・選別採取法の確立 ヒトHCN4・MinK・Nkx2.5遺伝子の発現制御領域によってEGFP遺伝子が発現するように、HCN4, KCNE1およびNkx2.5遺伝子のエクソン1を含むBACの転写領域にEGFP遺伝子を挿入した改変ヒトHCN4・MinK・Nkx2.5-BACベクターを作製した。予備実験としてヒトES細胞に本ベクターを導入した。現在、BAC-HCN4, MinK,Nkx2.5-GFP陽性の洞結節細胞を含む刺激伝導系細胞と心室筋を可視化しセルソーターを用いて選別採取法を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LQT1型患者由来iPS細胞株のスクリーニングした結果、心筋への分化能を持った2クローン株を樹立でき、さらに心筋への分化能を持った健常者由来iPS細胞も2クローン樹立した。この2種類の株を用いて心筋分化誘導を行った結果、LQT1患者の心電図に対応した異常を確認でき、その原因がKvLQT1電流の低下に特異的であることが判明した。また、LQT1型患者由来iPS細胞からの各種心筋細胞の可視化・選別採取法の確立を目的としたBACベクターの構築にも成功し、現在ヒトES細胞ならびにiPS細胞への導入を行っており、当初の目的を達成することが出来たと考える。また、HSP70の効果をKvLQT1およびKCNQ1で検討し、さらに現在HSFファミリーを介する経路も検討している。以上から達成度はほぼ計画通りに進行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
変異KvLQT1チャネル蛋白質の安定性に対するシャペロンHsp70の効果を以下の観点から検討する。 1. HSPファミリーシャペロンの役割:LQT1型iPS細胞由来心筋のKvLQT1蛋白質の量、細胞内局在やチャネル活性の変化をimmunoblot、免疫染色ならびにパッチクランプなどの生化学的及び生理学的手法を用いて評価する。HSP70, HSP40, HSP90, HSP27ならびにこれらを誘導する転写因子HSF-1の過剰発現及びsiRNAによるノックダウンにより、KvLQT1チャネル蛋白質を安定化するHSPを同定する。 2. HSPファミリーシャペロン誘導薬の効果:既報のHSPファミリー誘導薬であるGGAならびにmushroom由来ペプチドの効果を検討する。LQT1型iPS細胞由来心筋のKvLQT1蛋白質の細胞内局在の変化を免疫染色、パッチクランプ法を用いて、それぞれの蛋白質量の変化をWestern blot法で、ユビキチン化修飾を免疫沈降で解析して蛋白質の安定性の変化を評価する。また、pulse-chaseにより蛋白質の分解速度を比較する。 3. 化学シャペロンのチャネル安定化に及ぼす作用を検討する:既報のチャネル蛋白質を安定化する作用があるEPA, bepridil, olpurinon, valsartanの効果を検討する。LQT1型iPS細胞由来心筋のKvLQT1蛋白質の細胞内局在の変化を免疫染色、パッチクランプ法を用いて、それぞれの蛋白質量の変化をWestern blot法で、ユビキチン化修飾を免疫沈降で解析して蛋白質の安定性の変化を評価する。また、pulse-chaseにより蛋白質の分解速度を比較する。
|