平成25年度において、酸感受性外向整流性アニオンチャネルASORは、マウス大脳皮質ニューロンに発現しており、この活性化が本ニューロンの酸毒性死に関与することを明らかにし、加えてこのASORは強い温度感受性を示すことを明らかにした。一方、脳卒中や脳外傷時に、低体温療法が有効であることが知られている。そこで、平成26年度においては、まず第一に、この低体温療法のメカニズムに、ASORの温度感受性が関与するかどうかについて検討した。ニューロンの酸毒性ネクロ-シス死は、ASORブロッカーのみならず、低温(25℃)条件によっても有意に抑制されることが明らかになった。その結果、低体温療法の機序の少なくとも一部は、このニューロンASORの温度感受性で説明されることが示唆された。次に、このASORの分子実体が未だ不明であるので、その同定に向けた取組を行った。ヒト癌細胞KB株の抗癌剤シスプラチンに対して耐性を獲得した亜株は、このASOR分子の発現を失っていることを明らかにしたので、この亜株と親株の間の遺伝子発現差をマイクロアレイ法で解析し、8個の遺伝子が亜株で大きく減少していることを見出した。そこで、それらの一つ一つに対してsiRNA遺伝子サイレンシンク法を適用し、どの遺伝子のノックダウンがASCR電流活性を減少させるかについて調べて行った。その結果、AQP3、AQP5、TMC5、SLC16A6、SLC16A14、SLC10A5およびSLC44A2の遺伝子のノックダウンは、ASOR活性に影響を与えず、ASOR遺伝子とは無関係であることが明らかとなった。残されたもう1つの遺伝子についての検討は、平成26年度内には完了することができず次年度以降に残された。
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