研究課題
挑戦的萌芽研究
糖尿病は膵β細胞から分泌されるインスリンの不足やインスリンの作用障害によって発症する。糖尿病患者では膵β細胞量(膵島量)が減少しており、減少した膵島量を回復させる再生治療は糖尿病の根治治療となり得る。しかしながら、膵島量の調節機構は多くが不明であり、有効な膵島再生法も確立されていない。我々は、膵β細胞傷害後に再生が起こる膵島再生マウスを作製し、膵島量の変化を詳細に解析したところ、正常個体では膵島量は極めて一定であることが示された。膵島量を約5分の1に減少させると、その後急激な膵島再生が起こるものの、約2分の1まで再生すると再生速度は急激に遅くなることを見いだした。さらに、野生型マウスから単離した膵島を膵島再生マウスに移植すると膵島再生が明らかに減弱することを発見した。そこで本研究では膵島量の減少がどのような因子を介して感知され、どのような細胞の増加により膵島再生が起こるのかを解析している。本年度は、膵島内の一部の細胞が活発な細胞分裂を起こし、膵島量が増加することを発見した。さらに、膵島再生マウスへの膵島移植の代わりに過剰なインスリンを投与することによっても膵島再生が抑制された。以上の結果からインスリンあるいは残存膵島の仕事量の増加が膵島再生を促進していることが示された。さらに、膵島再生マウスの再生膵島を単離し、種々の分子発現を定量解析し、膵島再生時に発現が変化する遺伝子群の抽出を進めているとことである。今後、これらの分子の経時的な発現の変化や発現制御を解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度の実験から、膵島量が個体レベルで感知されインスリンあるいは膵島細胞の仕事量を介して再生が規定されていることが示された。また、膵島に増殖の盛んな細胞群が含まれていることを直接的に証明でき、本研究の重要課題の解析に入ったところである。膵島量の感知および膵島再生を担う細胞の解析という2つの課題で、明白な研究の進展がみられており、おおむね順調に進展していると考えている。
膵島再生が比較的少数の細胞の増殖によることが示されたので、今後はこの細胞の同定と特性の解析に進みたい。また、膵島制御の遺伝子解析にはレーザーマイクロダイセクションの手法が必要である。しかし今回使用できた機器は年式が古く、解析に適した試料を収集することが極めて困難であった。従って、新しいレーザーマイクロダイセクションの機器を共同研究で使用させていただく相談を進めている。
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http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/physiol/index.html