研究課題
挑戦的萌芽研究
概日時計は哺乳類では、睡眠・覚醒、体温調節、ホルモン分泌などの基本的生理機能を約24時間周期のリズム(概日リズム)で維持するために重要な機構である。概日リズムは温度変化に関わらず、ほぼ一定の周期を保てるという“温度補償性”があり、シアノバクテリアから哺乳類培養細胞に至るまで広く認められているが、詳細なメカニズムは明らかにされていない。一方、哺乳類は恒温動物であるため、環境温を変化させても体温をほぼ一定に保てることから、実際、哺乳類個体の体温を変化させて、概日時計の温度補償性を検証することは実験的に不可能であった。我々の同定したメタロプロテアーゼnardilysin(N-arginine dibasic convertase;NRDc:NRDc)は、細胞局在に依存した多機能性(細胞外:シェディング活性化因子、核内:転写調節因子など)を有し、その欠損マウス(NRDc-/-)は、成長遅延や行動異常など多彩な表現型を呈した。さらに、NRDc-/-の驚くべき表現型の一つは低体温であり(室温で野生型マウスNRDc+/+:38.0℃、NRDc-/-:36.5℃)、寒冷環境下(4℃)では体温を維持できないという、恒温動物の最大の特徴を欠失した“変温マウス”であることが分かった。したがって、本研究では、この変温マウスを用いて、哺乳類個体における概日時計の温度補償性を検証し、そのメカニズムの解明を目的とした。
3: やや遅れている
NRDc-/-を用いた哺乳類個体における概日時計温度補償性の検証に向け、本年度は、環境温変化とNRDc-/-の体温変化の相関関係の検討を行った。具体的には、①NRDc+/+と同じ体温(38℃)になる環境温、②高い体温(39~40℃)になる環境温、③低い体温(34~35℃)になる環境温、の3条件を検討し、NRDc-/-の体温が長期間(少なくとも1ヶ月)安定する環境温の設定を試みた。高温側の条件検討はほぼ完了しているが、低温側で体温が長期間安定する環境温はいまだ設定できていないため、さらなる条件検討が必要である。
今後は、低温側の条件設定が出来次第、各温度条件下で、NRDc-/-の概日リズム周期を測定し、温度補償性を検討する。同時に、各温度条件下での、NRDc-/-の体重、食餌摂取量、運動量、酸素消費量など、各温度における基本生理の違いも合わせて検討する。
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