体温は生体の恒常性維持において最も重要な因子の一つであるが、その分子レベルでの調節機構については未だ不明な点が数多く残されている。申請者らは、ショウジョウバエの温度選択行動を指標にした分子遺伝学的手法を駆使することにより体温調節に関わる分子群の同定を進めている。その過程で、共生細菌の有無により温度選択行動が大きく変化することを見出した。1)ショウジョウバエの腸内共生細菌叢のメタゲノム解析および共生細菌の単離培養を行い、2)単離培養菌の温度選択行動に及ぼす影響を解析した。 その結果、標準株であるw1118の3齢幼虫における腸内細菌叢はOrbus sasakiae、Providencia rettgeri、 Lactobacillus plantarumと相同性の高い3種によって主に構成され、その他にL. brevis、Acetobacter indonesiensis、A. pasteurianusによって構成されることを明らかにした。続いて、細菌叢解析により同定されてきた細菌について、多種類の培地、嫌気的・好気的な条件を用いて細菌コロニーを単離し、L. plantarum、L. brevis、P. rettgeri、A. indonesiensisを含む12種類の細菌と1種類の真菌を単離することに成功した。次に、実際にどの細菌が影響を及ぼすのかを調べるため、無菌飼育状態への既知細菌の添加によるノトバイオート体の作製と温度選好性への影響を検証した。飼育環境中から単離した各細菌について無菌飼育状態の添加におけるノトバイオート体の作製と3齢幼虫における選好温度への影響を検証した。単離した腸内細菌について検討した結果、これまでのところ温度選好性に影響を与える菌は同定されず、現在、さらに解析を進めている。
|