研究課題
挑戦的萌芽研究
平成25年度は①MVP法による収縮速度と心筋細胞の発生張力との相関の解析、②足場剛性の影響の検討、の2つを計画した。①MVP法による収縮速度と心筋細胞の発生張力との相関の解析:Traction force measurement法を応用して、心筋細胞を培養する培養するゲルをさくせいするときに蛍光ビーズを混入させ、心筋細胞の収縮に伴う蛍光ビーズの移動距離とゲル剛性からフーリエ変換を用いて発生張力を算出し、同時測定するMVPによる収縮速度と相関を検討した。収縮速度は、陽性変力作用をもつイソプロテレノール、陰性変力作用をもつベラパミル存在下でも行い、発生張力とMVP法による収縮速度が強い相関関係があること、すなわちMVP法で心筋細胞の発生張力を評価できることが明らかとなった(論文revise中)。②足場剛性の影響の検討:足場のゲルの硬度を8 kPa, 12 kPa, 25 kPa, 50 kPaの4種類を用い、収縮頻度、収縮/拡張速度、薬物応答性を検討した。収縮頻度はゲル硬度の影響を受けなかったが、収縮/拡張速度は12 kPaが最も大きく、それより柔らかくても硬くても低下することが分かった。薬物応答性としては、陽性変力作用をもつイソプロテレノール、抗不整脈作用を持つフレカイニドの作用を検討した。薬物応答性も12 kPaが最も良かった。以上から、薬物スクリーニングは12 kPaのゲル上で行うことが好ましいことが明らかとなった。予定していなかった検討として、異なるゲル硬度で培養した細胞の発現アレイ解析を行い、これらの変化に関わるパスウェイを検討した。増殖に関わるシグナルはダウン・レギュレーションし、カルシウム動態・収縮タンパク・イオン輸送に関わるシグナルがアップ・レギュレーションすることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初、計画していた2項目はすでに達成し、1つは論文も投稿しreviseとなっている。これに加えて、足場剛性の影響の検討に関しては、当初予定していなかった分子機構の検討も行っており、発現アレイ解析・パスウェイ解析により複数のパスウェイが足場剛性の違いによる収縮/拡張速度の違いに関与することを明らかにすることができた。こちらも、論文投稿の準備を行っている。以上から、当初の計画以上に進展していると考える。
平成26年度は以下の2つの検討を計画する。③ 電気現象・力学現象同時アッセイシステムの構築:心毒性には、不整脈発生につながる電気現象に対する副作用と心不全につながる力学現象に対する副作用の両者がある。電気現象に対する副作用は、MEA法による細胞外電位記録により行われており、これとMVP法を組み合わせることにより電気現象と力学現象を同時に記録することが可能となる。MEA・MVP同時アッセイシステムの動作確認を行うために、電気現象・収縮力に対する作用が既知の薬物数種類の作用を検討する。④ 同アッセイ系を用いた既存薬の作用評価・化合物ライブラリーのスクリーニング:同システムの動作確認が取れたところで、薬物の評価に入る。まずは、市販の抗不整脈すべてでMVP法で収縮・弛緩速度に対する作用を検討し、これらの収縮・弛緩速度に対する作用のリスト化を行う。次に、同システムをスクリーニングに用いるために多ウェルディッシュでMVP法の測定を行う。パイロット実験で、すでに384ウェルまで測定可能なことが確認されている。そこで、化合物スクリーニングへの応用性を評価するために、東京医科歯科大学の化合物ライブラリーからランダムに1000化合物を選び、384ウェルを用いたシステムでスクリーニングを行う。この中から、positive inotropeあるいはnegative inotropeの候補が同定された場合は、同システムを用いたスクリーニングの妥当性を検討するために、これらの化合物の心収縮能に対する作用を従来の方法、細胞内Ca2+イメージング・ビデオカメラによるedge detection・in vivoでの心エコー法・in vivoでのミラーカテーテルによる心内圧測定法、を用いて心臓収縮力に対する作用を検討し、MVP法による評価との相関性を検討する。
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