研究課題
QT延長性不整脈をはじめ薬物の心毒性は、創薬の開発中止・市販薬のリコールの重要な原因となっており、そのアッセイ系、特に開発早期段階のin vitroアッセイ系の確立は製薬業界から大きな期待が寄せられている。QT延長をはじめ電気現象のin vitroアッセイ系の開発が精力的に行われているのに対して、心筋力学作用のin vitroアッセイ系の開発は極めて遅れている。本研究計画は、ソニー株式会社が開発したMVP(motion vector prediction)法を用いて、ヒトiPS由来心筋細胞の力学的特性の評価が可能であるか否か検討すること、可能と判断された場合これを用いて薬物の心毒性評価システムを構築しその動作確認を行うこと、の2点を目的とした。対象として、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて、電気生理学的アッセイをMulti-electrode array (MEA)システムで力学的アッセイをMVPシステムを用いて同時アッセイすることに世界で初めて成功した(JMCC 2014;77:178-191)。同システムで、既存のQT延長作用を示す薬物、陽性変力作用を示す薬物、陰性変時作用を示す薬物のアッセイを行い、同システムが心筋細胞の電気生理・力学に対する薬物作用を高精度にアッセイできることを示すことができた。最近、抗がん剤の心毒性が問題となっている。そこで重篤な有害事象報告のある抗がん剤であるドキソルビシン、スニチニブおよび陰性コントロールとして有害事象の報告のないエルロチニブの毒性評価を行った。この結果、ドキソルビシンで陰性変力作用、スニチニブでQT延長作用を確認することができ、エルロチニブでは心筋電気生理・力学両方に有意な影響を及ぼさないことが確認された。以上から、抗がん剤の心毒性作用の評価も高精度に行うことができることが確認された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
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