研究課題
挑戦的萌芽研究
腫瘍免疫とはがん細胞に対する免疫機構であり、宿主の免疫機構による認識を受け、排除される。この原理を利用したがん免疫細胞療法は、ようやく臨床的治療法として注目されているが、充分な治療効果が達成されていないのが現状である。そこで我々は、全く新しい腫瘍免疫寛容モデルを創出し、このモデルの制御機構を解明する事により、腫瘍免疫療法の基盤を確立する。 具体的には、1)悪性腫瘍免疫寛容の成立に必要な抗原分子と悪性腫瘍免疫寛容ネットワークを形成する遺伝子クラスターの探索、2)独自に創成した悪性腫瘍免疫寛容モデルによる悪性腫瘍免疫治療機構の解明を試みる。1)ヒト悪性腫瘍免疫寛容機構におけるヒト悪性腫瘍側の因子解析。 (1)ヒトがん細胞の種類に対する選択的免疫寛容解析。ヒト慢性骨髄性白血病細胞(K562)を放射線照射後、初回免疫するとK562 に対する免疫寛容は成立するがんヒト前立腺癌細胞(PC-3)に対する免疫寛容は成立せず、移植後拒絶される事を、定量的に明らかにした。さらにヒト肝がん細胞(HepG2)を放射線照射後に初回移植免疫後、免疫寛容が成立することも確認できた。そこで、まずヒト慢性骨髄性白血病細胞(K562)を放射線照射後、初回免疫するとK562に対して成立する免疫寛容におけるトランスクリプトーム解析により、免疫寛容関連遺伝子を探索し、いくつかの候補遺伝子を発見した。(2)ヒトがん細胞に対する免疫寛容機構。我々が見出した異種細胞免疫寛容機構がどの様なメカニズムにより成立しているのかを解析し、ヒトがん細胞側の候補遺伝子を抽出した。2)ヒト悪性腫瘍免疫寛容機構における宿主側の因子解析。宿主(ゼラフィッシュ)の免疫システムの分化過程と初回免疫時期の対応関係を解析し、ヒト悪性腫瘍免疫寛容機構における候補遺伝子を抽出した。
1: 当初の計画以上に進展している
1)独自に創成した悪性腫瘍免疫寛容モデルは、まず放射線照射により増殖能を低下させた種々のヒト悪性腫瘍細胞を、発生の短期間(受精後30時間~72時間)免疫システムが未分化状態にあるゼブラフィシュ稚魚に移植すると、ほとんど消失するが、次に受精後1ヶ月~6ヶ月成魚になると、初回移植のヒト悪性腫瘍に対して免疫寛容が成立することを明らかにした。本研究では、このヒト悪性腫瘍免疫寛容の成立に必要なヒトがん細胞側遺伝子と悪性腫瘍免疫寛容ネットワークを形成する遺伝子クラスターを探索する事により、ヒト悪性腫瘍免疫寛容機構の解明を、試みた。2)本研究によるヒト悪性腫瘍免疫寛容機構とヒト悪性腫瘍免疫寛容阻害薬作用の関係を解析し、次世代のヒト悪性腫瘍免疫療法の基盤を確立するとともに、新しいヒト悪性腫瘍免疫寛容阻害薬の臨床応用に向けた開発研究を試みる。 3)ヒト悪性腫瘍免疫寛容機構におけるヒト悪性腫瘍側の因子解析。(1)ヒトがん細胞の種類に対する選択的免疫寛容成立機構解析。ヒト慢性骨髄性白血病細胞(K562)を放射線照射後、初回免疫すると K562 に対する 免疫寛容は成立するが、ヒト前立腺癌細胞(PC-3)に対する免疫寛容は成立せず、移植後拒絶される事を明らかにした。さらにヒト肝がん細胞を放射線照射後に初回移植免疫後、免疫寛容を確認した。そこで、まずヒト慢性骨髄性白血病細胞(K562)を放射線照射後、初回免疫するとK562に対して成立する免疫寛容におけるトランスクリプトーム解析により、免疫寛容関連遺伝子を探索し、いくつかの候補遺伝子を発見した。2)ヒト悪性腫瘍免疫寛容機構における宿主側の因子解析宿主(ゼラフィッシュ)の免疫システムの分化過程と初回免疫時期の対応関係を解析し、ヒト悪性腫瘍免疫寛容成立に関与する宿主側候補遺伝子を発見した。
1)平成25年度に発見したヒト悪性腫瘍免疫寛容関連遺伝子クラスターの作用機構を解析する。2)独自に創成したヒト悪性腫瘍免疫寛容モデルを活用し、既存のケミカルライブラリーによる悪性腫瘍免疫寛容活性スクリーニングを実施し、免疫寛容促進薬や免疫寛容抑制薬を探索する。このスクリーニングは、独自に 開発したトランスジェニック透明ゼブラフィッシュ(特願2012-235286)を使用して、96穴マイクロプレートによりハイスループットに実施する事が可能となっている。3)本研究によるケミカルスクリーニングによりヒットしたヒト悪性腫瘍免疫寛容阻害薬や促進薬の作用機序を 解析し、平成25年度に明らかになったヒト悪性腫瘍免疫寛容関連遺伝子クラスターとの関係を明らかにする。4)ケミカルライブラリーとしては、既存の医薬品ライブラリーに加え、免疫抑制薬および免疫刺激薬等を中心に、広範に実施する。5)本研究によるケミカルスクリーニングによりヒットしたヒト悪性腫瘍免疫寛容阻害薬や促進薬の作用機序を解析し、平成25年度に明らかになったヒト悪性腫瘍免疫寛容関連遺伝子クラスターとの関係を明らかにする。(1)本研究のヒト悪性腫瘍免疫寛容モデルにおいて2回目に移植されたがん細胞増殖を抑制する化合物を、ヒト悪性腫瘍免疫寛容阻害薬として選択する。 (2)本研究のヒト悪性腫瘍免疫寛容モデルにおいて2回目に移植されたがん細胞増殖を促進する化合物を、ヒト悪性腫瘍免疫寛容促進薬として選択する。(3)本研究によるケミカルスクリーニングによりヒットしたヒト悪性腫瘍免疫寛容阻害薬や促進薬の作用機序を解析する。(4)ヒト悪性腫瘍免疫寛容阻害薬投与時の遺伝子発現からヒト悪性腫瘍免疫寛容促進薬投与時遺伝発現を差引き抽出して、ヒト悪性腫瘍免疫寛容遺伝子として、その役割を解明する。
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