研究課題/領域番号 |
25670133
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
垣野 明美 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教(特定雇用) (00534637)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化LDL / 酸化LDL受容体 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
酸化LDL-酸化LDL受容体相互作用は動脈硬化の進展に重要である。動脈硬化制御の試みは、これまで酸化のプロセスを追いかけていた。これに対して本研究では、リガンドである酸化LDLを標的とする内因性ブロッカーの探索とその作用機序解明を目的としている。今回我々は、酸化LDLの内因性阻害因子としてDel-1を同定した。 昨年度までに、Del-1が酸化LDL阻害作用を有することを明らかにした。すなわち、Del-1は酸化LDLに結合することにより、酸化LDLの血管内皮細胞やマクロファージへの取込み、酸化LDL刺激によって起こる細胞応答を抑制することを明らかにした。さらに遺伝子改変マウスを用いた解析により、Del-1過剰発現は、高脂肪食負荷によって生じる血管壁脂質沈着に対して抑制的に働くことがわかった。 今年度は、in vivoで、Del-1や酸化LDLの血中濃度の変動や相互のバランスが、動脈硬化の発症や進展にどのように影響し得るのかについて検討した。高脂肪食負荷を行ったマウスから大動脈血管を摘出して全RNA を抽出・精製し、血管内皮細胞機能に関連する因子について、定量RT-PCR により解析した。結果、Del-1過剰発現マウスは野生型マウスに比べて、ICAM-1やMCP-1の発現が減少していた。このことから、in vivo における血管内皮細胞の病的機能変化に対して、Del-1 が抑制的に作用していることが示唆される。また同モデルから採取した血漿サンプルを用いて、血液中のDel-1、酸化LDL、LOX-1 ligand(酸化LDL活性)をELISAにより測定した。その結果、Del-1過剰発現マウスは野生型マウスと比べ、血中酸化LDL量は変化しないが、LOX-1 ligandすなわち酸化LDL活性が減少することが明らかになった。このことは、in vivoでもDel-1が酸化LDL活性に対して抑制的に働くことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、in vivoにおけるDel-1の酸化LDL作用阻害について検討することを目的とした。高脂肪食負荷を行ったDel-1過剰発現マウスを用いて、Del-1の血管機能に対する作用を解析した。解析の結果、Del-1過剰発現により、in vivo における血管内皮細胞の病的機能変化に対して、Del-1 が抑制的に作用していること、また血中LOX-1 ligandすなわち酸化LDL活性が減少することが明らかになった。したがって、in vivoでもDel-1が酸化LDL活性に対して抑制的に働くことが示唆される。このような結果から、順調に研究は進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、培養細胞やリコンビナント蛋白質を用いた解析、およびDel-1過剰発現マウスを用いた解析は順調に進展している。平成27年度は、これまでの研究成果を論文にまとめるとともに、動脈硬化性疾患モデル動物の血中Del-1濃度や発現量について調べ、Del-1が疾患の発症や進展にどのように影響し得るのかを検討する。また、ヒトの血漿サンプルを用いて、動脈硬化性疾患における血中濃度を調べることにより、生体内で酸化LDLの作用がDel-1によってどのように制御されているのか、生理的な抑制機構について考察したい。測定には、市販のELISAキットを使用する。 また、Del-1以外の内因性酸化LDL阻害因子について明らかにし、解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりも安価で研究が遂行できたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額とH27年度請求額を合わせて、培養細胞およびマウス個体レベルでの解析のために、培養試薬、ELISAキットや抗体、定量PCRに用いる試薬等を購入する。研究成果報告として、学会にも参加する予定である。
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