研究課題/領域番号 |
25670137
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
徳永 文稔 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (00212069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質 / 細胞・ 組織 / シグナル伝達 / 生体機能利用 / バイオテクノロジー |
研究概要 |
ユビキチン修飾系は、タンパク質分解やシグナル伝達など多彩な細胞機能制御に関与し、その不全は癌、自己免疫疾患、炎症性疾患など多くの病態発症に関連する。申請者らはユビキチンのN末端を介する新規直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ(LUBAC)を同定した。さらに、LUBACが炎症や免疫応答に重要な転写因子であるNF-κBシグナル経路を制御することを見いだした。そして最近、我々は脱ユビキチン化酵素のA20が7番目のZnフィンガー(ZF7)領域を介して直鎖状ユビキチンに特異的に結合することでLUBAC活性を抑制し、その不全がB細胞リンパ腫発症に関連することを示した。本研究では、この特異的結合性を応用して直鎖状ユビキチン鎖を検知するプローブを構築し、細胞内定量法や基質の同定を行うとともに、直鎖状ユビキチン鎖を標的として、新規抗癌剤候補をスクリーニングするための基礎技術を確立することを目指している。 平成25年度は、A20 ZF7分子プローブとして、直鎖状に連結した2分子のユビキチン(ジユビキチン)及び4分子のユビキチン(テトラユビキチン)との結合を特異的にモニターするアッセイ系を構築した。この系を活用することで阻害剤探索が可能になった。また、細胞内にA20 ZF7のタンデムリピート体を発現させると、炎症性サイトカインであるTNF-αによって誘導されるNF-κB活性化の抑制を導くことから、直鎖状ユビキチン鎖にA20 ZF7が結合することでNF-κBシグナルに阻害的に働くことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画に予定した「直鎖状ユビキチン検出プローブの作出と細胞レベルでの応用」という課題のうち、プローブの作製に成功し、実際に直鎖状ユビキチン鎖を特異的に検出する基礎技術が構築できた。また、細胞レベルでもNF-κB活性阻害効果の検出に成功している。一方、実施を予定していた細胞内でのライブイメージングは良好な解析結果を得ることができておらず、今後の検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
直鎖状ユビキチン鎖検出プローブの病理組織への展開 (1) 各種刺激下における直鎖状ユビキチン化タンパク質の検索。MEF-A20-ZF7x3をプローブとして、LPSなど病原体認識パターンや紫外線・放射線刺激によるDNA損傷に起因するNF-κB活性化経路など各種刺激下で活性化するNF-κB経路において直鎖状ユビキチン化される基質タンパク質を同定する。また、癌や炎症性疾患、自己免疫疾患由来の組織中で直鎖状ユビキチン化される基質タンパク質の解析を行い、新規タンパク質に関してはユビキチン化部位を質量分析にて同定するとともに、生理的な役割の解明を行う。 (2)GFP-A20-ZF7x3を用いた直鎖状ユビキチン産生の数理解析への応用。NF-κBシグナルは振動することが知られている。NF-κBの細胞質-核内移行の振動と直鎖状ユビキチン産生の速度解析とを比較することにより、NF-κBシグナルのオシレーション機構に新たな数理モデルを構築する。 (3)細胞内直鎖状ユビキチン定量系構築と創薬スクリーニングへ向けた条件検討。平成25年度の成果を発展させ、高感度で定量性の高いELISA系を構築し、病原体認識パターンなど各種刺激時のみならず、病理組織での直鎖状ユビキチン産生量を定量し、疾患との連関を探る。また、B細胞リンパ腫を想定した新規抗癌剤や抗炎症性疾患薬開発に向けて、直鎖状ユビキチンとプローブタンパク質との結合を阻害する低分子化合物のスクリーニングに着手する。
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