研究実績の概要 |
糖鎖修飾は、分泌過程で生じる翻訳後修飾の典型的なものであり、分泌タンパク質や膜表面タンパク質の大半は、何らかの糖鎖修飾を受ける。その中で、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)修飾は、ゴルジ体において起きると従来は考えられていた。しかしながら、申請者らは、小胞体におけるGlcNAc修飾反応を見出した。最初の例は、Notch受容体のO-GlcNAc修飾であり、小胞体に局在するEOGTにより触媒される。興味深いことに、EOGT に相同性を示すEOGT-Lの遺伝子変異が、脳異常を伴う先天性筋ジストロフィー(Walker-Warburg症候群)の患者に見出された。また、EOGT-LはO-マンノシル化されたジストログリカン(DG)をGlcNAc修飾することが明らかになった。昨年度は、EOGT-LによるDGのGlcNAc修飾に必要である糖ヌクレオチドトランスポーターのスクリーニングにより、小胞体UDP-GlcNAcトランスポーターの候補遺伝子を2種類得た。本年度は、これらの研究成果に基づき、CRISPR-Cas9によるゲノム編集により、HEK293T細胞の変異体を作成した。その結果、候補遺伝子A,Bの単独変異体ではCTD110.6抗体で検出されるEOGT-L発現に伴うジストログリカンのGlcNAc修飾レベルに大きな変化は認められなかった。一方、候補遺伝子A,Bの2重変異体を作成したところ、CTD110.6抗体に対する反応性が顕著に減少した。また、これらのタンパク質の細胞内局在が、小胞体マーカーと一致することを確認した。以上の結果より、小胞体局在型の2種類の糖ヌクレオチドトランスポーターが、小胞体におけるEOGT-Lを介したDGのGlcNAc修飾に関与することが明らかになった。
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