研究課題
本研究では、細胞膜糖脂質と細胞内転写因子のリンクによる膜糖脂質会合タンパク質の動的機能の解析を目ざしてきた。具体的には、悪性黒色腫(メラノーマ)の細胞膜でガングリオシドGD3に会合する分子、ネオジェニンが同定された。このネオジェニンがガンマセクレターゼによって切断された後、その細胞内部分が核内に移行して転写因子として働くことが想定された。そこで、実際にこの細胞質ドメイン(Ne-ICD)が切断されて、メラノーマの悪性形質を増強する作用を発揮しているのか否かを明らかにするための種々の実験を行った。Ne-ICDの発現を、GD3+ 細胞とGD3- 細胞間で比較すると、プロテアソーム阻害剤添加時に、GD3+細胞で明らかな発現上昇が認められた。一方、ガンマセクレターゼ阻害剤のDAPTで処理すると、ガンマ産物は認められなかった。よって、GD3+細胞ではガンマセクレターゼ活性によりNe-ICDがより多く発現していることが分かった。このことは、GD3、ガンマセクレターゼ、ネオジェニンの同時免疫染色でも明らかになった。さらに、これらの分子の共同作用によって、Ne-ICDの転写促進作用がメラノーマの形質に影響を及ぼしているか、につき、ChIP-シークエンス解析を行った。即ち、断片化したDNA浮遊液から抗ネオジェニン抗体で免疫沈降したサンプル中のDNA塩基配列を、DNA断片をクローニングした後に解読することで検討した。28種以上の遺伝子が同定されて、少なくとも半数以上が、Ne-ICDの一過性導入で発現上昇を示した。よって、GD3発現下で、メラノーマの悪性形質の発現に働く実行委分子の候補が明らかになった。
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