研究課題
挑戦的萌芽研究
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は生体膜構成成分スフィンゴ脂質の代謝産物であり、細胞表面に発現しているスフィンゴシン1-リン酸受容体(S1PR)と結合し、細胞遊走などの生理活性を発揮する。S1PRはGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、これまでに5つのサブタイプが同定され、それぞれ組織特異的に発現している。そして、近年S1PRがガンの悪性化に深く関わることが明らかになってきており、腫瘍マーカーとしての位置づけも重要となってきた。現在、受容体を標的とする腫瘍イメージングは、RI標識したリガンドおよびリガンドアナログを用いて行われている。また、抗腫瘍作用を有するリガンドの開発も盛んに行われている。しかしながら、従来の治療・診断用物質は、標的となる腫瘍細胞表面の受容体のみならず、正常細胞に発現している受容体とも交差反応するために、診断精度・治療上の安全性に問題が指摘されている。そのため、サブタイプ特異的作動薬および診断薬の開発が期待されている。そこで、S1PRの各サブタイプと特異的に結合できる人工リガンドを「RNA」という高分子マテリアルを利用し、創製することを試みている。本年度はヒトS1PRを標的とするRNAアプタマーを、SELEX法で創製するために必要な組換えタンパク質およびS1PR発現細胞の作成に取りかかった。具体的にはS1PRのうち、細胞表面に出ているペプチド部分について各S1PRのサブタイプについて大腸菌を用いた組換えタンパク質として調製した。一方で、S1PRを発現していないCHO-K1 細胞にレンチウィルス発現系を用いてS1PRの各サブタイプを恒常的に発現するstable cell lineを構築し、この細胞を用いたCell-base SELEXを実施を開始した。
2: おおむね順調に進展している
S1PRは悪性脳腫瘍由来細胞よりクローニングを図ったのだが、全てのサブタイプをクローニングするのに少し時間を要した。一方で当所困難が予想された組換えタンパク質の調製が順調に進んだ。さらに、CHO-K1 細胞にレンチウィルス発現系を用いてS1PRの各サブタイプを恒常的に発現するstable cell line構築を進めている。また、予備実験として同システムを用いてSSTR、TGF-β type III受容体の細胞表面へ恒常的に発現させる系を構築しており、これらの系を用いてRNAアプタマーの取得を行っている。以上のような理由によりおおむね順調に進展していると考えられる。
まずS1PRに対する結合性を基盤にRNAアプタマーをスクリーニングする。S1PRのうち細胞表面に発現しているペプチド部の組換え体を用いて結合性を指標としたアプタマーの創製を進める。さらに、創製したS1PR発現CHO-K1 細胞が機能的に発現しているかどうかをFDSSを用いて確認する。確認後、Whole cell selexを実施する。
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