研究課題/領域番号 |
25670153
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
原 孝彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, プロジェクトリーダー(参事研究員) (80280949)
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研究分担者 |
鈴木 輝彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (70621027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プロテアソーム / ユビキチン化 / アンチエイジング / タンパク質品質管理 |
研究概要 |
マウスの肝臓では、加齢に伴ってユビキチン化タンパク質が増加するが、ハダカデバネズミ (H. glaber)の肝臓ではこの現象が観察されない。したがってH. glaberでは、立体構造異常をきたしたタンパク質を迅速に分解除去する能力が長期にわたって維持されていると推察される。そこでH. glaberではユビキチン化タンパク質の分解活性が高進しているのではないかと考え、プロテアソーム構成因子の発現レベルをqRT-PCRとウェスタンブロッティングにより解析した。その結果、H. glaber皮膚線維芽細胞では、プロテアソームサブユニットのひとつが高レベルに発現していることが判明した。このタンパク質はマウス皮膚線維芽細胞では検出されなかった。H. glaber線維芽細胞におけるRpn7, Rpt6, α1, β1, β2, β5タンパク質の発現レベルはマウス線維芽細胞とほぼ同等であった。次に、H. glaber線維芽細胞のユビキチン化タンパク質の総量を解析してみたところ、マウス線維芽細胞と比べて明らかに減少していた。そこで、H. glaber線維芽細胞から26Sプロテアソームをグリセロール濃度勾配遠心によって分離し、キモトリプシン活性を測定してみたところ、マウス線維芽細胞と比較して約2.5倍に活性が増強されていた。この実験結果は、H. glaber特異的な高比活性プロテアソームの存在を示唆している。これが、H. glaberの不良タンパク質品質管理機構の中心的役割を果たしている可能性があるため、26Sプロテアソームの成分解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画では、H. glaber線維芽細胞とマウス線維芽細胞に、ユビキチン化タンパク質のひとつであるCXCL14を遺伝子導入して、プロテアソーム分解活性を比較する予定であった。しかし、H. glaber線維芽細胞の増殖スピードと遺伝子導入効率が極端に遅かったため、それを断念し、細胞抽出液の全ユビキチン化タンパク質の比較解析を行った。その結果、H. glaber線維芽細胞ではマウス線維芽細胞よりユビキチン化タンパク質が顕著に少なくなっていたため、2年目に予定していた26Sプロテアソームの構成要素の発現解析とプロテアソーム活性の解析に着手した。結果としては、目標に向かって研究は順調に進んでいると言える。なお、H. glaber由来iHep細胞は、樹立を試みたが成功しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
特有のサブユニットを含むH. glaber特異的な高比活性プロテアソームが確かに存在することを、皮膚線維芽細胞だけでなく、臓器を用いて生化学的に証明する必要がある。その上で、H. glaberに特有なサブユニットを過剰発現させたときに26Sプロテアソームの比活性とユビキチン化タンパク質の分解能が亢進するかどうか、検討する。そして、そのサブユニットの異所的発現がH. glaberの並外れた長寿の原因であるかどうかを決定するために、トランスジェニックマウスの作出に着手する計画である。マウスでは結論が得られるまでに時間がかかりすぎるため、ハエや線虫のようなモデル生物の導入も視野に入れている。
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次年度の研究費の使用計画 |
H. glaber線維芽細胞の増殖が遅かったため、予定していた生化学的実験のひとつを実施できなかったため。 注目しているプロテアソームサブユニットに対するsiRNAをH. glaber線維芽細胞に導入し、ユビキチン化タンパク質の総量と26Sプロテアソーム活性について、空ベクター導入細胞と比較解析する。次に、このサブユニットの発現ベクターをマウス線維芽細胞に導入し、ユビキチン化タンパク質の総量と26Sプロテアソーム活性について、空ベクター導入細胞と比較解析する。上記の一連の実験で確証が得られたならば、H. glaber特有のプロテアソームサブユニットcDNAをalbuminプロモーターの下流に配置したコンストラクトをつくる。それをC57BL/6マウス受精卵前核に顕微注入して、トランスジェニックマウス系統を作出する。以上の実験を実施する為に、血清・培地・抗体・酵素類、そしてディスポ器具を購入する。消耗品の購入に加えて、本研究費を使って学会発表と論文投稿を行う計画である。
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