研究課題
挑戦的萌芽研究
これまでのエリスロポエチン(Epo)遺伝子に関する研究成果をもとに、マウスEpo遺伝子改変マウスを作出し、慢性貧血を成獣で発症する実験モデルの開発に成功した。このマウスは、成体の造血に必要な量のEpoをつくることができないため、出生後2週間から貧血を呈した(Yamazaki et al Nature Commun 2013)。本マウスの臓器酸素分圧を測定したところ、野生型マウスに比べて酸素分圧が著しく低い状態であった。また、多くの臓器で低酸素誘導性転写因子HIFが活性化しており、全身性に慢性的な低酸素状態に陥っていることが明らかとなった。本マウスは生存率や寿命、繁殖能に異常を認めないことから、慢性低酸素環境に適応していると考えられた。次に、低酸素状態から回復した際の生体反応を解析する目的で、慢性低酸素マウスにEpo製剤を投与した。その結果、貧血状態が著しく改善されると同時に、高発現していた低酸素誘導性遺伝子群の発現が正常マウスと同等のレベルにまで低下した。また、貧血により代償性に肥大していた心臓も有意に縮小した。貧血回復時の鉄動態を解析したところ、貧血時には過剰に蓄積していた鉄がEpo製剤投与により、速やかに赤血球産生に利用されることが示された。さらに、本マウスを用いて、網羅的な代謝産物および遺伝子発現の解析を行ったところ、急性低酸素状態の対照サンプルとして2日間低酸素曝露した野生型マウスと似たプロファイルを示した。現在、慢性低酸素応答に特異的なメカニズムの解明を目指して、網羅的解析結果を詳しく解析している。
2: おおむね順調に進展している
計画通りにマウス実験系を確立し論文発表した。また、マウスを用いて網羅的解析を開始することができた。さらに、慢性低酸素負荷を解除する解析系も確立することができた。
慢性低酸素の実験モデルを確立することができたので、これまでの網羅的解析結果を詳細に検討する。とくに、急性期と慢性期の低酸素応答系の相違点に着目する。また、代謝経路の変化が遺伝子発現制御に影響を及ぼすメカニズムを明らかにするために、エピゲノム制御系の変化を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (22件) (うち招待講演 5件)
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