5-アミノレブリン酸はヘム生合成系の最初の生合成前駆体であり、ALAの合成により細胞内のヘム量がコントロールされている。非組織特異型ALA合成酵素遺伝子であるALAS1遺伝子破壊マウス(HT)における、ALA依存的な耐糖能異常(IGT)・インスリン抵抗性(IR)の発症機序について、解析を行い、HTの骨格筋では、インスリン依存的なde novoグリコーゲン合成、および、グリコーゲン合成を制御するグリコーゲンシンターゼ(GS)に対する、グルコース6-リン酸(G6P)によるアロステリックな活性化が障害されていることを見出し、HTでは、G6Pによる、GSに対するアロステリック活性化が障害され、インスリンにより惹起されるde novoグリコーゲン合成が不全となるため、個体での血糖処理能が低下して、IGT/IRとなることを示した。また、ALAS1ノックダウンC2C12筋芽細胞を作製し、HTと同様のグリコーゲン合成異常を認め、さらに、ヘム生合成阻害剤スクシニルアセトン処理実験からALA合成失調は最終的にヘム合成失調を来し、これによりcell-autonomousにグリコーゲン合成異常が起こることを明らかとした。本研究により、ヘムによる、グリコーゲン合成を介した、予想外の糖代謝調節機構が存在し、その異常がIGT/IRをもたらすことを明らかとした。一般に、二型糖尿病などに認められるグリコーゲン合成異常はインスリンシグナル異常の結果と考えられており、本研究により、グリコーゲン合成自体の異常が、IGT/IRをもたらしうることが明らかとなり、糖尿病発症における新規の分子機序を発見した。加えて、コホート研究により報告されている、ALAによる糖尿病治療の分子基盤が本研究により解明されたことで、今後の糖尿病薬としてのALAの利用が広がることが期待される。研究成果は現在、投稿中である。
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