(代表者研究実績)これまで腫瘍抽出物のFOXN-1シグナル経路への影響を検討してきたが、有意な変化は観察されなかった。本年度は、腫瘍抽出物によるタンパク質の発現変化をiTraQにより網羅的解析し、発毛因子のスクリーニングためのマーカー遺伝子の同定を試みた。iTraQによる測定で腫瘍抽出物添加により発現が2倍以上、または1/2以下となった遺伝子をVisualization and Integrated Discovery (DAVID ) によりFunctional Annotationを行った。腫瘍抽出物添加により発現が2倍以上亢進した遺伝子群には、発毛促進/脱毛抑制に重要なミトコンドリアの活性やカルシウム恒常性に関与する遺伝子が濃縮されていた。また、腫瘍抽出物添加により発現が1/2以下となった遺伝子群には、脱毛に関与するアポトーシスを誘導する因子が含まれていた。これらの遺伝子のうち、特に顕著な変化(発現量が多く、発現変化が大きい)を示す遺伝子をマーカーとすることで発毛因子をスクリーニングできるかもしれない。また、発毛効果のあった癌細胞Aの分泌物をELISAで解析したところ、脱毛を促す炎症系サイトカンインの殆どが検出限界以下で、唯一検出されたTGFβも発毛効果が観察されなかった癌細胞Bの1/3以下であった。 (分担者研究実績)発毛を促進した因子の同定のため、腫瘍細胞培養上清を陰イオン交換樹脂で2分画(AとB)に分離して解析した。毛乳頭細胞の増殖促進効果を解析したところ、B分画に活性が見られた。そこで、毛乳頭細胞の増殖促進効果が知られている既知の成長因子をELISA法で解析した。TGF-β、VEGF、b-FGFのいずれも検出限界以下であった。B分画には、新規の成長因子が含まれている可能性が示唆される。そこで、その因子を精製すべく現在培養上清を大量に集めている。
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