研究課題/領域番号 |
25670161
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古賀 貴子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90451905)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 骨芽細胞 / 神経突起伸長 / 生理活性 / 細胞間制御 |
研究概要 |
マウス胎児の頭蓋冠から採取した細胞を、骨芽細胞分化誘導培地で21日間培養して得た骨芽細胞培養上清からオステオカインを単離することとした。PC-12細胞は、NGFを作用させると神経突起の伸長やアセチルコリンの合成と放出能の増大といった神経様の表現型を示すようになる。このPC-12細胞を用いて骨芽細胞培養上清中にPC-12細胞の神経突起伸長を誘導する活性を、顕微鏡下で観察した。骨芽細胞分化誘導7日、14日、21日、いずれの培養上清もPC-12細胞の神経突起伸長をもたらさなかったが、培養上清を限外濾過にて8倍以上に濃縮したところ、PC-12細胞の突起伸長が濃度依存性に誘導されるという事を見いだしたので、活性因子を精製しMS/MS解析により、多数の候補因子を同定するに至った。本年度は、これら候補因子のうち、果たして、どの因子が、生理活性を持つか、はたまた、因子Xとその他の分子とが複合体を精製して活性を有するのかを検討した。まず、これら活性候補因子に関して、現存する骨芽細胞遺伝子発現網羅解析のデータから、どのような発現変異を示すかを明らかにした。また、公開されているデータベースを用いて、あらゆる組織内で候補因子がどのような組織に発現するか、骨組織特異的に発現するか否かを明らかにし、より活性因子としての可能性のある分子を9つに絞り込んだ。これらの候補因子について、これまでの文献を網羅的に検索し、神経細胞に作用する可能性を持つ因子2つに絞り込んだ。また、骨芽細胞を特異的に欠損するマウスの神経系への作用に着目した解析としては、現存する骨芽細胞欠損マウスの骨組織標本の神経分布について解析を行い、異常の有無を検索した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未知の生理活性を有する因子の精製と単離には、その因子の化学的性質を明らかにしながら、それに適した方法、具体的には、精製するカラムの種類やそれらを用いる順番などを最適化しながら進める必要がある。従って、未知因子の単離・同定には、数重なる試行錯誤と、多大な労力、時間を要する。申請者は、いかに、目的因子の精製を効率よく行うかの条件設定のための文献検索を行い、その結果、目的因子に最適化したプロトコルを作った。また、既存の生理活性候補因子は多数あるものの、その本体を一つに絞り込むまでの精製には成功為ていなかったた、文献検索やその他遺伝子発現データベースなどを駆使した解析により、より活性を持つであろうことが示唆される因子を9つにまで絞り込むことができた。本年度中に出産を経て、妊娠期間中から身体的負荷を軽減して研究を進めてきたが、この一年間に達成する予定であったが活性因子の候補を絞り込むことができ、目標通りの成功を収めたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在得ている活性候補因子は非常に多数存在する。そのため、活性因子の精製条件を変更し、より精製度の高い活性画分を得て、質量分析を行い、現存するデータの再現をとりつつ、より可能性の高い因子を得る予定である。精製条件の変更、新しい精製条件は概ね定まってきており、現在、活性分子の同定まであと一歩のところだといえる。今後この活性分子が同定され、その生体内における機能が明らかになれば、骨による神経系の制御を示す重要な知見となることが期待される。また、これまでに得られた活性候補因子については、これらの遺伝子の過剰発現、もしくはこれらの遺伝子の組み合わせの過剰発現が神経細胞の分化や保護に働くかどうかを現在調べているところであり、表現型を示した因子に関しては骨芽細胞特異的に欠損させたマウスを作成し、神経系への影響が表れるかを検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
申請者は25年度初めに妊娠し、12月から産前・産後の休暇を取っている。そのため、妊娠中も、身体的負荷がおおきかったため、化学薬品などを用いる実験をさけ、文献検索や既存の膨大な遺伝子発現データベース、公開されている発現データベースなどを駆使して、本申請の目的である生理活性因子の同定にさいし、得られた候補因子の可能性を絞り込む作業に取り組んだ。そのため、実験に使用する備品などを実質的に購入する必要がなかった。 次年度は、今年度明らかにした神経細胞への作用をもつと考えられる候補因子Xに関して、その作用点を明らかにするために、Xによって発現に変動をもたらされる遺伝子を網羅的に解析するためのGeneChip解析を行う。また、Xの遺伝子改変マウスを作成し、その表現型を調べるために、ホットプレートテストやテールフリックテストによる感覚神経の機能試験、水迷路による記憶試験などを実施する予定である。従って、これらの実験のためのマウス飼育施設、マウス行動テストに関わる備品、物品の購入を考えている。
|