マウス胎児の頭蓋冠から採取した細胞を、骨芽細胞分化誘導培地で21日間培養して得た骨芽細胞培養上清から、神経系細胞に作用を持つ因子を単利することとした。PC-12細胞を用いて、骨芽細胞培養上清中にPC-12細胞の突起伸長を誘導する活性を、顕微鏡下で観察した。骨芽細胞分化誘導7日、14日、21日、いずれの培養上清もPC-12細胞の神経突起伸長をもたらさなかったが、培養上清を限外濾過にて8倍以上に濃縮したところ、PC-12細胞の突起伸長が濃度依存性に誘導さっるということを見出したので、活性因子を精製し、MS/MS解析により多数の候補因子を同定するに至った。 しかし、昨年度のMS解析では、明らかに分泌タンパク質ではないタンパク質も同定されていたことから、骨芽細胞培養上清の生理活性分画の精製が不十分であることが示唆されていた。そこで、本年度は、精製のプロトコルを改善することに努めた。骨芽細胞は大量の骨基質タンパク質やコラーゲンを精製する。このコラーゲンが生理活性に影響を与えていることが予想されたため、精製プロトコルにコラゲナーゼ処理のステップを挿入し、活性因子の精製に努めた。その結果、比活性が更新し、その分画を再度MS解析することとした。 結果、神経系に関与することが知られている因子が複数同定され、この因子を過剰発現させることで、PC-12細胞の神経突起伸長への効果を検討した。現在、これらの因子について、リコンビナントタンパクの作成とそれを用いた効果の検討を実施予定である。
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