研究課題/領域番号 |
25670162
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
多久和 陽 金沢大学, 医学系, 教授 (60171592)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | イノシトールリン脂質 / PI3キナーゼ / フォスファターゼ |
研究概要 |
クラスII及びIII のホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)により産生されるホスファチジルイノシトール(PI)-3-リン酸(PI(3)P)は、小胞輸送制御に関わる重要な役割を有する。産生されたPI(3)Pは細胞内の適所で適切なタイミングで代謝される必要がある。内皮において、小胞輸送制御に重要な役割をはたすクラスII PI3Kアルファ酵素PI3K-C2αが機能する細胞内分画で働いているPI(3)Pホスファターゼを同定し、その機能を明らかにすることは重要である。PI(3)Pホスファターゼの候補として、ミオチュブラリン(MTM)ファミリーの14種(MTM1及びMTMR1~13)が想定される。定量的PCRを用いて、内皮に発現するMTMファミリーメンバーを絞り込んだ。そのうちの一つ(MTM-xと仮称)は、内皮細胞エンドソームに発現していた。RNA干渉法によるMTMR-x発現の抑制が血管内皮機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。MTMR-xノックダウンは、細胞内小胞の増加と巨大化を引きおこした。MTMR-xノックダウンは、PI3K-C2αノックダウンの効果とは異なり、血管新生因子スフィンゴシンー1-リン酸による細胞遊走の著しい亢進を引きおこした。一方、VEカドヘリンの細胞間接着部位への集積やマトリゲル上でのチューブ様構造形成に対しては、MTMR-xノックダウンはPI3K-C2αノックダウンと同様に抑制作用を及ぼした。これらの結果は、MTMR-xはエンドソームのPI(3)Pレベルを調節する脱リン酸化酵素であり、PI3K-C2αとともに小胞運動の調節に関与していること、そしてこの機能を介して内皮細胞の遊走、細胞間接着および形態形成に重要な役割をはたすことを強く示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PI3K-C2αに依存する内皮細胞機能に影響するMTMファミリーの脂質ホスファターゼを同定できた。細胞遊走に関しては、PI3K-C2αノックダウンの効果に拮抗したが、一方でVEカドヘリン集積やチューブ様構造形成はMTMR-xノックダウンはPI3K-C2αノックダウンと同様に抑制作用を及ぼした。すなわち、内皮機能の正常な発現には、適所における適切なタイミングでのPI3K-C2αによるPI(3)Pの合成とPI(3)Pの分解の両プロセスが起こることが必要であることが、強く示唆された。全体として、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
PI3K-C2αおよびMTMR-xがどのタイプの小胞に局在して機能を発揮するのか、さらにはメンブレントラフィックのどの過程に関与しているのかについてより詳細に検討し、分子メカニズムを明らかにする必要がある。現在、MTMR-x KOマウスの繁殖を進めており、PI3K-C2αKOマウスとの二重KOマウスの表現型解析と併せて、in vivoでのMTMR-xの機能的役割を明らかにする。
|