研究課題/領域番号 |
25670165
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高津 宏之 京都大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (70360576)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | P4-ATPase / ATP8B1 / PFIC / フリッパーゼ |
研究概要 |
①PFICの原因となるATP8B1の変異体の作製し、HeLa細胞での安定発現株を樹立した。 ②作製した変異体の安定発現細胞株を用いて、ホスファチジルコリン(PC)に対するフリッパーゼ活性を調べた。 進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)および、より症状の軽い良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC) の原因となるATP8B1の変異のうち8つを選定し、そのウィルス発現ベクターを作製し、HeLa細胞で発現させた。その結果、多くの変異体は本来、局在すべき細胞膜には局在できずに分解されてしまうことが確かめられた。その中で、L127P、I344Fの二つの変異体は、野生型と同程度に細胞膜に局在することが新たに分かった。そこで、これらの変異体のフリッパーゼ活性を測定したところ、野生型で見られたPCに対するフリッパーゼ活性が欠失していることが明らかとなった。 この結果から、PFIC1が発症する分子メカニズムは主に2つの原因に分けられることが推察された。一つはATP8B1のタンパク質自体がうまく発現できないために発症に至る場合で、もう一つは発現はするものの変異によってPCに対するフリッパーゼ活性が欠失しているがために発症に至る場合で、いずれにしてもATP8B1が正常に機能できないために発症する。これまでのところ、我々が考えるモデルは以下のとおりである。 ATP8B1が発現する微小胆管の膜は細胞膜であり、リン脂質2重膜の外葉に偏ってPCが存在していると考えられる。分泌される胆汁酸はPCを主体としたリン脂質によって保護されているが、そのPCの供給源となっているのがATP8B1が外葉からフリップしたPCではないだろうか。ATP8B1が外葉のPCをフリップし、それを受け取ったABCB4とABCB11が協調して、細胞内からPCと胆汁酸を分泌する。現在は、このモデルの正当性を検証すべく、実験を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた二項目、 ①PFICの原因となるATP8B1の変異体の作製と安定発現株の樹立 ②作製した変異体の安定発現細胞株を用いたフリッパーゼ活性の検出 いずれも計画通りに遂行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、胆汁の分泌におけるATP8B1の機能に関して、ATP8B1がPCのフリッパーゼであるという観点から新たなモデルを提唱したい。そのために、胆汁の分泌に際して協調して働くPCのフロッパーゼであるABCB4と胆汁酸のトランスポーターであるABCB11との関係に着目し、ATP8B1との機能的相互作用を中心に実験を進める計画である。
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