研究実績の概要 |
ヒトP4-ATPaseであるATP8B1のフリッパーゼとしての機能が、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)の発症とどのような関係にあるのかを明らかにするために、26年度は以下の2項目について研究を遂行した。 ①PCに対する相反する動き、ATP8B1によるフリップとABCB4によるフロップが互いに相関性のあるものか否かを検証した。 ②細胞膜に局在するヒトP4-ATPaseのフリッバーゼ活性と基質特異性を明らかにし、ATP8B1とPFIC発症の因果関係を中心に論文としてまとめた。 これまでの結果、我々が改良したフリッパーゼ活性測定アッセイで意外なことにATP8B1はPSよりもPCに対して特異的なフリッパーゼ活性を示すという結果が得られた。そこで、PCに対する相反する動き、ATP8B1によるフリップとABCB4によるフロップが互いに相関性のあるものか否かを検証するため、両者を共発現させた細胞でPCの取り込みの変化を調べた。その結果、ATP8B1のフリップにより取り込まれるPCの量が、ABCB4の共発現によって見かけ上、減少することが明らかとなり、両者のフリップ-フロップに相関性があることが分かった。肝細胞ではATP8B1とABCB4の両者は毛細胆管側の細胞膜に限局し、そのどちらか一方でも機能的に欠損するとPFICが発症する。一般的にPCは細胞膜では外葉に偏って存在しているとされている。したがって、正常な肝臓の毛細胆管の膜では、外葉に豊富なPCをATP8B1がフリップして細胞内に取り込み、それに続いてABCB4がABCB11と協調してPCと胆汁酸を排出し、スムーズで持続的な胆汁の分泌がなされている、というモデルを考えた。これらの研究成果をまとめて論文にした( Takatsu H. et al, J. Biol. Chem. 2014, 289, 33543-33556 )
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