研究課題
我々は昨年度までの研究により細胞死制御に関与するcFLIPsとよばれる遺伝子をX染色体に選択的に導入した遺伝子改変(cFLIPs KI)マウスを作製した。そのマウスの解析により死んだ腸上皮細胞から増殖因子が放出され、周辺の生細胞に増殖を誘導(代償性増殖)している可能性を見出した。そこで本年度はその因子を同定するために胎生期の腸管を用いてゲノムワイドなトランスクリプトーム解析を行い検討した。マイクロアレイを用いて検討したところ組織修復に関与するRegIIIb やRegIIIg遺伝子を含む多数の遺伝子の発現がcFLIPs KIマウス由来の腸管では上昇していた。なかでもRegIIIb やRegIIIg遺伝子は出生直後には成長に伴い野生型マウスでも著明な誘導がかかるが、出生前には野生型マウスでの発現誘導は認められず、出生後の誘導のメカニズムと出生前の細胞死に伴う誘導のメカニズムは異なっている可能性が明らかとなった。cFLIPs KIマウスとRIPK3欠損マウスと交配することにより、腸管上皮細胞のアポトーシスは抑制され、RegIIIbやRegIIIgの発現も低下することが明らかとなった。この事は傷害を受けた上皮細胞から、あるいは傷害を受けた上皮細胞に応答した周辺細胞でRegIIIbやRegIIIgの発現が誘導されることを示している。さらにこれらの分子に対する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、KIマウスの腸管上皮細胞で発現し、消化管内腔にも分泌されていることが明らかとなり、その程度は腸管上皮細胞の傷害の程度と相関している可能性が示された。現在RegIIIbやRegIIIgが胎生期における代償性増殖に関与しているかを個体レベルで明らかにするために、Crisper/Cas9法を用いて二重欠損マウスを作製中である。
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臨床免疫・アレルギー科
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