研究課題/領域番号 |
25670169
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
荒川 博文 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (70313088)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リソソーム / ミトコンドリア / タンパク質分解 / 品質管理 / 活性酸素種 / 酸化ストレス / 酸化タンパク質 / p53 |
研究概要 |
不良なミトコンドリアの蓄積は、ミトコンドリアの機能不全を引き起こし、老化、がん、神経変性疾患、循環器疾患などの原因となり得る。しかしながら、ミトコンドリアの品質管理がどのように行われているかのメカニズムについてはほとんどわかっていない。我々はMieap遺伝子を同定し、そのコードする蛋白質が、ミトコンドリアの構造破壊を伴わないミトコンドリア内へのリソソームタンパク質集積を誘導し(MALM: Mieap-induced Accumulation of Lysosome-like organelles within Mitochondria)、ミトコンドリアの品質管理に極めて重要な役割を果たしている事実を発見した。この研究の目的は、これまでのリソソームの働き、ミトコンドリア内へのタンパク質輸送、ミトコンドリア二重膜の通過孔、ミトコンドリア内蛋白質分解についての教科書の内容を大きく書き換え、これまでに取り残されてきた未知の研究領域を開拓し、細胞生物学におけるパラダイムシフトをおこすことにある。本研究課題においては、現在のところMEFを用いた電子顕微鏡解析、及びDABによる免疫電子顕微鏡解析によって、少なくとも4種類(cathepsin-B, cathepsin-D, LAMP1, LAMP2)のリソソームタンパク質が、低酸素ストレスに反応して、正常細胞においても、構造破壊を伴わずに、ミトコンドリア内部へ集積すること、網羅的プロテオミクス解析法である2DICAL法によって、2種類(cathepsin-D, LAMP1)のリソソームタンパク質がミトコンドリア内部へ集積している事実を明らかとできた。これらの結果から、MALMは少なくともマウスからヒトの細胞に保存されている本質的な細胞機能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)ミトコンドリア内リソソーム存在の形態学的証明: MEFを用いた電子顕微鏡解析を行ったが、現在のところミトコンドリア内に典型的なリソソームの構造を検出していない。DABを用いた免疫電子顕微鏡解析によって、構造破壊を伴わずに、4種類(cathepsin-B, cathepsin-D, LAMP1, LAMP2)のリソソームタンパク質が、低酸素ストレスに反応して、MEFのミトコンドリア内へ集積することを確認した。 (B)ミトコンドリア内リソソーム存在の生化学的証明: 網羅的なプロテオミクス解析法であるIP-2DICAL法を用いて、内在性Mieapの存在に依存して、MALM誘導時に、2種類(cathepsin-D, LAMP1)のリソソームタンパク質が、MEFのミトコンドリア内へ集積することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
(A)ミトコンドリア内リソソーム存在の形態学的証明: 引き続き、MEFを用いた形態学的観察を行う。金コロイドを用いた2重染色法によって、リソソーム膜タンパク質であるLAMP1と、リソソーム内分解酵素であるcathepsin-Dを同時に免疫電子顕微鏡解析することで、オルガネラとしてのリソソーム構造に矛盾しない局在が検出できるかを確認する。組織におけるMALM発生の可能性が高いマウスの大腸腺腫組織(Apc変異マウスより採取)を用いて電子顕微鏡解析を行い、ミトコンドリア内リソソームの形態学的評価を行う。DAB法と金コロイド法による免疫電子顕微鏡解析を行い、MALM発生状況とリソソーム様構造物の存在との整合性を確認する。 (B)ミトコンドリア内リソソーム存在の生化学的証明: MALMが誘導されたミトコンドリアを純度良く精製単離する。精製したミトコンドリアから全タンパク質を抽出して、迅速かつ網羅的なプロテオミクス解析法である2DICAL法によって、MALM誘導時のミトコンドリア内へリソソーム構成タンパク質が検出されるかを確認する。これまでの研究では、抗体が使用可能であったLAMP1, LAMP2, Cathepsin-B, Cathepsin-Dの4種のリソソーム関連タンパク質が検出可能であったが、今回の網羅的プロテオミクス解析によって、仮にタンパク質ごとの検出感度を度外視すれば、理論的にはリソソームの全構成タンパク質の検出が可能なはずである。目標としては、これまでに確認された4種以外に、一つでも多くのリソソームタンパク質存在の確認を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたマウス大腸腺腫組織における電子顕微鏡解析や、金コロイド法を用いた二重染色法が、検体の都合より、次年度へ持ち越すことになった。また、2DICAL法によるプロテオミクス解析に関しても、組織検体を用いた解析が、検体の都合より、こちらも次年度に持ち越す事になったことで、次年度使用額が発生した。 マウス大腸腺腫組織における電子顕微鏡解析や、金コロイド法を用いた二重染色法を行う予定である。また、組織検体を用いた2DICAL法によるプロテオミクス解析を行う予定となっている。
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