研究実績の概要 |
不良なミトコンドリアの蓄積は、ミトコンドリアの機能不全を引き起こし、老化、がん、神経変性疾患、循環器疾患などの原因となり得る。しかしながら、ミトコンドリアの品質管理がどのように行われているかのメカニズムについてはほとんどわかっていない。我々はMieap遺伝子を同定し、そのコードする蛋白質が、ミトコンドリアの構造破壊を伴わないミトコンドリア内へのリソソームタンパク質集積を誘導し(MALM: Mieap-induced Accumulation of Lysosome-like organelles within Mitochondria)、ミトコンドリアの品質管理に極めて重要な役割を果たしている事実を発見した。この研究の目的は、これまでのリソソームの働き、ミトコンドリア内へのタンパク質輸送、ミトコンドリア二重膜の通過孔、ミトコンドリア内蛋白質分解についての教科書の内容を大きく書き換え、これまでに取り残されてきた未知の研究領域を開拓し、細胞生物学におけるパラダイムシフトをおこすことにある。本研究課題においては、MEFを用いた電子顕微鏡解析、及びDABによる免疫電子顕微鏡解析によって、少なくとも4種類(cathepsin-B, cathepsin-D, LAMP1, LAMP2)のリソソームタンパク質が、低酸素ストレスに反応して、正常細胞においても、構造破壊を伴わずに、ミトコンドリア内部へ集積することをあきらかとできた。また、生化学的手法であるプロテネースKプロテクションアッセイによって、免疫電子顕微鏡で得られた結果をcathepsin-Dに関して確認できた。これらの結果から、MALMは少なくともマウスからヒトの細胞に保存されている本質的な細胞機能であると考えられる。
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