研究課題/領域番号 |
25670172
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
木村 彰方 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60161551)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / 循環器・高血圧 / 生体分子 |
研究概要 |
CARPは心筋細胞内でタイチンやミオパラジン等の細胞質構造タンパクと結合するとともに、核内に移行して転写活性化をもたらす。我々は以前に肥大型心筋症の病因となる3種のCARP変異を見出し、それらがいずれもタイチンとの結合性を増強することを報告している。そこでラット心筋細胞を用いた心筋再構築系に正常ないし変異CARP遺伝子導入することによって、これらが心筋収縮パラメーターを検討したところ、1種の変異(T123M)は収縮力を増強したが、他の2種の変異(P52A, I280V)は細胞質内での安定性が著しく低下することを明らかにした。さらにタンパク分解阻害剤存在下での検討から、I280Vは弛緩速度を遅延させることを見出した。このことから、CARP変異はタイチン結合性増強とは異なるメカニズムで心筋収縮パラメーターに影響することが判明した。一方、肥大型心筋症の病因となる2種類のタイチン変異(S30186A, D30994N)を見出した。これらの変異がマップされるIgドメイン構造を用いたアッセイ系で、当該領域に変異がない場合にはMURF1との結合性を示さないが、いずれの変異ともMURF1との結合性を増強すること、タイチンのユビキチン化が増強することが明らかになった。これらの領域のアミノ酸配列を比較したところ、すでに知られているMURF1結合ドメイン構造とは相同性を示さず、新たなドメイン構造の存在が示唆された。SLMAP変異によるNav1.5細胞内輸送障害については、遺伝子導入細胞を用いた検討した結果、COPII機能には依存しなかったためER機能阻害とは直接関連しないと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CARPの結合ドメイン構造の同定には至らなかったが、肥大型心筋症の病因CARP変異が3種ともまったく異なる心筋収縮パラメーター変化を示したこと、2種はタンパク不安定性を示すことが明らかになったことから、CARP-タイチン結合性をターゲットにした戦略を変更することが必要であると考えられた。ZASPやSLMAPはNav1.5との直接結合がないため、遺伝子導入細胞を対象として抗Nav1.5抗体を用いたpull-down解析を実施したが、十分な共沈降産物が得られなかったため、さらなる高発現系の開発や抗体の選択などの検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
CARP-タイチン間の結合に着目した研究から、CARPが結合する別のタンパクに視点を移す。ことに、すでにCARP変異によって結合性が変化することを明らかにしているミオパラジンとの機能連関をターゲットとして、心筋症関連ミオパラジン変異によるCARP結合性の変化を含めて、ミオパラジンに着目した機能解析ならびに機能修飾を検討することとする。また、サルコメア関連遺伝子変異によって、Nav1.5等の心筋チャネルの機能異常がもたらさせるかを含め、心筋チャネルの機能修飾のターゲットを追加検討する。これとは別に、タイチン変異に起因するMURF1結合性増強によるタイチン分子の分解促進について細胞レベル、in vivoレベルで検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H26.3.31までに、物品等が納入され請求書が来ているものの、事務的に支払が完了していなかったため 理由に記載の通り、請求された物品費等を支払う
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