研究課題
病因変異による機能異常の検討から、心筋症・心不全や難治性不整脈では、心筋細胞内における構成要素間の連関異常に起因する分子動態異常が存在する。そこで、これらの分子動態異常に着目し、その分子機序を解明するとともに、治療・予防戦略を得ることを目的として、以下の研究を実施した。昨年度までにCARP-タイチン、MURF-タイチンの結合性変化が心筋症の原因となることを明らかにしたが、結合性の程度と病態形成には明らかな関連性がないことが判明し、また、有効なアッセイ系を開発できなかった。そこで、タイチンとの結合性を示すミオパラジン、オブスキュリン、ネブリン、ネブレットに着目して、心筋症患者および不整脈患者を対象に変異検索を実施したところ、オブスキュリン、ミオパラジンおよびネブリン遺伝子に疾患関連変異が同定された。一方、これまでに既知の原因遺伝子に病因変異が見出されない心筋症家系で、ゲノムDNAのメチル化維持に関わる遺伝子にミスセンス変異を見出した。そこで、他の心筋症患者について当該遺伝子の変異を検索したところ、別のミスセンス変異を同定した。ついで、変異を有する患者10名および健常者6名を対象にして全ゲノムのメチル化パターンを検討したところ、変異を有する患者に共通してゲノムDNAのメチル化の程度が有意(p<0.001)に異なる座位を見出した。ことに、健常者平均の80%未満にメチル化が低下している座位を6箇所、130%以上に亢進している座位を23箇所出来たため、これらはサルコメア構造タンパク異常によらない心肥大制御の新規メカニズムを解明する手がかりとなると考えられた。これらとは別に、洞性不整脈患者に見出されたミオシン重鎖変異がミオシン結合タンパクCとの結合性を亢進すること、細胞間の電動速度を遅延させることなど、サルコメア構成要素間の結合性変化が心筋症のみならず不整脈の原因となることを解明した。
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