研究概要 |
Estrogen receptor(ER)は、ホモダイマーを形成して作用することが知られている。ダイマーの検出法としては、Re-Chip法やBRET法が知られているが、顕微鏡下でダイマーを可視化した報告はこれまでにない。本研究では二分子間の相互作用を検出する方法である近接ライゲーションアッセイ (PLA: Proximity Ligation Assay) 法を用いて、乳癌組織におけるERダイマーの検出を行った。ERはERαとERβのサブタイプが存在するが、今回はERαのホモダイマーに注目して、その検出を試みた。 乳癌培養細胞MCF-7、T-47D(以上ERα陽性)、MDA-MB-231(ERα陰性)を用い、セルブロック(フィブリンクロット法、ホルマリン固定・パラフィン包埋)を作製した。さらにMCF-7に、エストロゲンおよびER blockerを添加し、同様にセルブロックを作製した。PLAを施行し、蛍光顕微鏡にてドット・シグナルを確認した。MCF-7およびT-47DではERαダイマーを示すドット状のシグナルが検出されたが、MDA-MB-231では検出されなかった。エストロゲン添加MCF-7では、エストロゲン濃度(10p, 100p, 1n, 10nM)依存性にERαダイマーの増加が検出された。また、そのシグナルはER blockerの添加によって検出されなくなった。今回の検討では、PLA技術を用いてERダイマーを顕微鏡下で可視化する方法を構築することができた。また、この方法はホルマリン固定やパラフィン包埋による影響を受け難いことから、さらに外科病理標本を用いた検討へと展開することが可能であると考えられる。
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