研究課題
乳癌はエストロゲン依存性増殖を症例が多く、エストロゲン受容体(ER)が治療標的因子の一つとして確立されてきた。ERは二量体を形成することでその作用を発揮する。しかしこれまでに病理組織標本上でこの二量体の形成を直接で観察する手段がなかった。近接ライゲーション法は、近接(<40nm)している二つのタンパクを検出することができ、近年、タンパク相互作用を観察する目的で開発された技術である。本研究はこの近接ライゲーション法を応用し、ER二量体の存在を可視化する技術を構築した。乳癌培養細胞と乳癌組織においてPLAを施行し、ERのダイマーを示すドットを蛍光顕微鏡にて検出した。乳癌培養細胞ではエストロゲン依存性株を用い、エストロゲン添加時のダイマーパターンを確認した。その結果、エストロゲン添加によって核内にERαホモダイマー (α/α)、ERヘテロダイマー (α/β) をそれぞれ検出することができた。また、これらダイマーを示すシグナルは、ICI 182,780の添加によって抑制された。また、乳癌組織を用いた検討では25症例の検体を用いてPLA法を施行し核内のダイマーのドット数を計測し、バイオマーカーとの関連を検討した。その結果、乳癌細胞1個当たりのERαのホモダイマーの数はERα、PgR (progesterone receptor) の標識率 (LI: labeling index) と有意な正の相関を示し、Ki67のLIとは有意な負の相関を示した。以上、本研究により初めてERのダイマーを病理組織標本上で可視化して評価することができた。今後さらに多くの乳癌臨床検体を用いてERダイマーの意義を明らかにすることで、そのパターンの解析が乳癌診断に貢献できる可能性が強く示唆された。
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