研究課題/領域番号 |
25670175
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
常山 幸一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (10293341)
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研究分担者 |
井村 穣二 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (80316554)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重金属 / カドミウム / X線マイクロアナライザー / イタイイタイ病 / 病理標本 |
研究概要 |
イタイイタイ病(イ病)は慢性カドミウム(Cd)中毒の極型と考えられるが、患者生体内のCd動態は不明な点が多く、どの細胞に蓄積し、周囲にどのような反応が起こるのかは不明である。我々は、X線マイクロアナライザー(EPMA)を生体組織に応用し、富山大学に保存されているイ病患者の臓器を用いてCdの組織内局在を解析している。これまでに、生体組織中CdのEPMA解析のための標本作製プロトコールを確立し、5症例のイ病患者の肝、腎、膵、甲状腺においてCd沈着部位の可視化に成功した。EPMA解析には従来ホルマリン固定標本を用いていたが、臓器中Cd濃度の実測値と比して組織中のCdは微量であるという問題があった。我々は、ホルマリン固定液中にCdが流出していると考え、凍結標本をごく短時間アセトン固定してパラフィンブロックを作製することで、より鋭敏な正確なCd蓄積部位のイメージングが可能となった。イ病では肝臓に最も多くのCd沈着が認められるが、その殆どは肝細胞に蓄積していた。ただし、臓器中Cd濃度が高い症例では、肝細胞に加えて門脈域の結合織にもCd沈着が見られることがわかった。肝細胞はメタロチオネインが高度に発現しているが、門脈域にメタロチオネインは観察されない事から、門脈域の結合織に沈着するCdはフリーの状態で毒性を発揮している可能性が示唆された。腎臓ではCdの沈着はわずかであり、残存する近位尿細管に蓄積していた。膵臓では委縮したラ氏島に、甲状腺では濾胞上皮にCdの沈着が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
生体組織中のCd蓄積をEPMAで解析するための標本作製プロトコールが完成し、あらゆる臓器で再現性良くCd蓄積を可視化できる体制が整った。 イ病患者の臓器中Cd蓄積を解析したところ、従来より注目されていた肝臓や腎臓において、仮説を裏付けるCd沈着が確認された。それに加え、従来はあまり注目されていなかった膵臓や甲状腺といった組織においても、Cdの特徴ある蓄積が確認された。特に膵臓ではラ氏島において亜鉛の局在と一致してCdの蓄積が認められており、Cd暴露とβ細胞障害、糖尿病といった新しい展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
イ病患者のCd蓄積部位における、周囲の微小環境を詳細に検討する。また、Cdを無毒化するメタロチオネインの発現との相関を併せて検討する。Cd蓄積とメタロチオネイン発現が一致しない部位において、フリーのCdが臓器障害を惹起している可能性が指摘されるため、細胞障害や線維化などの因子も併せて検討する。 イ病の各臓器ごとに特徴あるCd蓄積が認められたことから、Cd蓄積と疾患との関連性を検証する。例えば膵臓ではラ氏島に選択的にCd蓄積が認められ、その局在は亜鉛と一致していた。β細胞はインスリン産生に亜鉛を必要とするが、亜鉛トランスポーターはCdも通すことが知られており、亜鉛欠乏時にはCdなど他の金属イオンも取り込まれる可能性がある。この現象はβ細胞障害の一端を模倣している可能性があり、β細胞障害の有無や疫学データの再解析を通じて、Cdとβ細胞障害、糖尿病との関連性を検討する。また、イ病以外の糖尿病患者の膵臓でのEPMA解析も追加で検討する。 イ病は我が国では収束に向かう疾患と考えられているが、世界に目を転じれば、多くの国々で重金属汚染は喫緊の課題となっている。Cdの生体への影響をイメージングという新しい切り口で明らかにし、その成果を国内外に発信する。
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