研究課題
イタイイタイ病(イ病)は慢性カドミウム(Cd)中毒の極型と考えられるが、患者生体内のCd動態は不明な点が多く、どの細胞に蓄積し、周囲にどのような反応が起こるのかは不明である。我々はX線マイクロアナライザー(EPMA)を生体組織に応用し、富山大学に保存されているイ病患者の臓器を用いてCdの組織内局在を解析した。7症例は患者臓器の一部が凍結保存されていたため、ホルマリン液体中へのCdの溶出を避ける目的で、短時間アセトンで固定ののち、新たにパラフィンブロックを作成した。固定時間が短かったと推測される10例についても、通常の方法で作成されたパラフィンブロックを用いて検討を行ったが、通常の方法で作成されたパラフィンブロックからのEPMA解析は不可能であり、7症例のみの解析(正常対照は3例)が可能であった。新鮮臓器で最もCd蓄積が高濃度であった肝臓では、門脈域周囲の肝細胞や、門脈域の結合組織の一部にCdの蓄積が認められた。Cd蓄積部の組織形態に目立った変化はなく、炎症細胞浸潤なども認められなかった。腎臓でのCd蓄積は残存する近位尿細管の一部や間質の一部に認められたが、糸球体への蓄積は見られなかった。Cdが蓄積した尿細管の多くは変性像を呈していたが、Cd蓄積がない変性尿細管も多く、因果関係は不明であった。一部のシュウ酸カルシウム結晶にもCdが含まれていた。甲状腺では濾胞上皮の一部にCdの蓄積が見られたが、非蓄積細胞との形態的差異は見られなかった。膵臓ではランゲルハンス島(ラ氏島)に一致してCdの蓄積が見られた。正常のラ氏島より萎縮しており、二重染色ではインスリン陽性のβ細胞が著減し、主にグルカゴン陽性のα細胞で構成されていた。Cdはβ細胞の亜鉛トランスポーターを介して取り込まれていると推測された。疫学的にもイ病患者に糖尿病罹患が多く、Cd暴露による糖尿病発症機序が推測された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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