プロテアソームは細胞内タンパク質分解を担う主要なプロテアーゼである。最近まで、多くの組織で構成的に発現され、さまざまな生命現象を制御する構成型プロテアソームと免疫応答に際して誘導され、主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子による抗原提示を促進する免疫プロテアソームの2種が知られていたが、2007年に第3のプロテアソームが発見された。胸腺プロテアソームと命名されたこの新種のプロテアソームは胸腺皮質上皮細胞に特異的に発現するβ5t サブユニットを構成成分として持っており、CD8+ T細胞の分化、とくに同細胞の胸腺における正の選択に重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では、β5ファミリーのプロテアソームサブユニットであるβ5t、β5i 遺伝子に変異を導入して、その機能を欠失させた遺伝子改変マウスとβ5tトランスジェニックマウスを用いて、プロテアソームがCD8+ T細胞の胸腺選択に果たす役割を解析した。皮質上皮細胞と髄質上皮細胞において同一のβ5ファミリーのサブユニットを発現するマウスでは、CD8+ T細胞数が減少するとともに、CD8+ T細胞における TCRβの発現が低下した。以上よりCD8+ T細胞の分化には、胸腺の皮質上皮と髄質上皮で発現するβ5ファミリーサブユニットの種類に差異があることが重要である可能性が示唆された。また、ヒトβ5tサブユニットには多型が存在することを見出した。現在、同多型の意義と疾患への関与を解析している。
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