研究課題/領域番号 |
25670189
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 伸一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (90361625)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 全身性エリトマトーデス / TLR7 / 1型インターフェロン / 形質細胞用樹状細胞 / RNA / 免疫 |
研究概要 |
我々は非環状イソプレノイドであるプリスタンを腹腔に投与することにより自己免疫性腎炎を発症するSLE 様の実験モデルを用いて、SLEの発症機構を明らかにすることを目的にしている。この実験モデルでは、病原体の核酸成分を認識する受容体Toll-like Receptor 7(TLR7)、1型インターフェロンが重要な原因分子として報告されている。しかし腹腔内に存在するTLR7 のリガンドは何かわかっていない。25年度はどの細胞が関わっているのかを明らかにした。形質細胞用樹状細胞(pDC)がインターフェロンの産生に重要な役割を果たしているので、この実験モデルにおけるSLEの発症にpDCが重要な役割を果たしていることを証明することを目的として、pDC特異的にジフテリア毒素の受容体を発現させたマウスを用いた。このマウスにジフテリアを投与することでpDCをマウスから取り除いた場合、マウスの腹腔にプリスタン投与後SLEの誘導の初期に認められる炎症が著しく抑制されることを明らかにした。この結果はプリスタン投与によるSLE様の症状の発症にpDCが関わっていることを示唆する。この論文はNature Immunologyに投稿予定である。次にTLR7のリガンドの中でもRNAが実際にSLEの誘導の初期に認められる炎症に関わっているのかどうかを検討する予定である。pDCのTLR7の反応の中でRNAにだけ反応が悪いノックアウトマウスを用いた解析では、初期の炎症がきわめて抑制されていたことより、RNAに対するpDCの反応がSLEの発症に重要であることが推測された(Nature Immunologyに投稿予定)。今年度はプリスタン投与後、実際に認められるTLR7のリガンドは何かを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度は、プリスタン投与後腹腔にてTLR7依存的に起こる炎症に、どのTLR7リガンドが関わっているのかを同定し始めている予定であったが、Arl8bのノックアウトマウスの論文をNature Immunologyへ投稿するための実験を行ったことにより、同定予定が遅れている。今年度はこの論文の掲載とともに、プリスタン投与後腹腔内にTLR7のリガンドが集積することを明らかにし、そのTLR7リガンドを同定することを目標とする。そして、このSLEの発症に同定されたTLR7リガンドが関わっているのかを明らかにし、SLEの発症機構の解明を前進させることを目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定とは少し遅れているが以下の3点について慎重に研究を進めていく 1. プリスタン投与後の初期炎症におけるRNA の役割の検討 RNAがプリスタン投与後の腹膜炎の発症に重要な役割を果たしているのかをRNase inhibitorを用いてより詳しく解析し、RNAを腹腔に投与するだけでも腹膜炎が誘導できるのかを検討する。2. 腹腔洗浄液中のTLR7 リガンドの存在を検討 TLR7KOマウスの腹腔にプリスタンを投与後、腹腔にTLR7リガンドが集積しているのかを検討する。腹腔洗浄液を用いて形質細胞用樹状細胞と古典的樹状細胞を刺激する。細胞の活性化はreal time PCR, またはInvivogenにて発売しているインターフェロン量を検討するために作製された細胞株を用いて行う。3. 腹腔洗浄液よりTLR7 リガンドの同定 TLR7KOマウスの腹腔にプリスタンを投与後の腹腔洗浄液をTLR7-Flagを発現させたBa/F3細胞に反応させたのちBa/F3細胞が活性化されるのを確認後、TLR7-Flagを免疫沈降する。そしてこのTLR7に会合している分子を質量分析にて解析する。TLR7のリガンドが同定されたら、他のSLE 様モデルマウスMRL-lpr/lpr マウス、BXSB-Yaaマウス、NZB/NZW F1 マウスにおいて週齢ごとに血清を集めて、血清中のこのリガンドの濃度変化を質量分析にて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
2月にマイクロアレイの解析を依頼したが、納品が4月になるということでその支払いをするための金額を残すつもりであった。 マイクロアレイの解析の支払いに使用する。
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