研究課題
我々は全身性エリトマトーデス(SLE)の発症機構の解析を目的として挑戦的萌芽を頂いた。マウスの腹腔にプリスタンを投与すると2週間後には初期の炎症として腹膜炎を発症する。そして投与後2ヶ月位から自己に対する抗体として抗核酸抗体が産生されるようになる。さらに3-4ヶ月経つとBALB/cマウスではSLEを発症して腎臓の炎症により死に至る。これらの現象がTLR7に依存して起こることが報告されていることから、腹膜炎発症時の腹腔内に内在性のTLR7のリガンドが存在し、慢性的にTLR7リガンドが存在し続けるものと予想した。我々が同定したTLR7に特異的に会合する分子のノックアウトマウスの解析では、形質様樹状細胞においてTLR7のリガンドであるRNAの他に比較的小さな核酸成分imidazoquinoline compound やguanosine analogによってTLR7刺激すると1型インターフェロンの産生が著しく減弱しており、プリスタンの腹腔投与によるSLEの発症も全く認められなかった。我々の結果は、形質細胞様樹状細胞に存在するTLR7の活性化によって産生される1型インターフェロンがプリスタン投与によるSLEの発症に重要な役割を果していることを示唆している。研究期間内に同定できなかったが、プリスタン投与によって発生する内在性のTLR7リガンドを同定すべく質量分析解析をこれから慎重に進める予定である。そして、このマウスの誘導モデルを用いて明らかになった新しい情報は、C57BL/6マウスにおいては死に至るほどの腎臓の炎症は起こらず、BALB/cのメスにおいてのみ死に至るという事実である。我々はこの事実からSLEの発症に関わる何らかの遺伝子を同定する予定である。
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