研究課題
社会の高齢化に伴い心不全患者数が増加し、心不全パンデミックと呼ばれている。心不全はさまざまな心疾患の終末像であるが、中でも梗塞後心不全は、薬物抵抗性を示し極めて予後不良の病態である。心不全の発症には、心筋細胞死が重要であることが知られているが、その機序は完全には明らかになっていない。本研究では、免疫学的監視という観点から、心筋梗塞で傷害をうけた心臓が心不全にいたる過程における新規の細胞死機構を解明することを目的としている。免疫学的監視機構とは、細胞傷害性細胞が、病的変化をきたした細胞(がん細胞やウイルス感染細胞など)の細胞表面に発現した抗原を認識し、それらの細胞に細胞死を誘導する生体防御機構のことである。我々は、マウス心筋梗塞モデルを用いて、心筋組織に浸潤する細胞傷害性免疫細胞の同定を試み、その結果、gamma delta-T細胞が梗塞後心筋組織に浸潤することを明らかにした。また、細胞傷害性細胞と病的変化をきたした細胞の相互作用を阻害する抗体を投与することにより、梗塞後の心筋組織における心筋細胞死が抑制されるとともに、心筋リモデリングの進展が減弱化された。これらのことから、心筋梗塞後の心筋組織において、免疫学的監視機構が作動して、心筋細胞死を惹起し、その結果、心不全が増悪することが示唆された。免疫学的監視機構を制御することにより、梗塞後心不全発症を予防する新たな治療戦略の確立が期待される。今後は、ヒトでも同様の動作原理がはたらいているかどうかを明らかにしたい。
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PLoS One
巻: 23 ページ: e111097
doi: 10.1371/journal.pone.0111097. eCollection 2014