研究課題
ヒトES/ iPS細胞の臨床応用において、安全性確保、中でも「腫瘍化克服」は最重要課題であるが、これまでの取組みは間接的な腫瘍化抑制に過ぎない。本研究は、革新的な癌遺伝子治療技術として研究者が独自開発したm-CRAベクター作製技術を異分野の幹細胞再生医学に応用することで、本問題を克服する技術開発を行う挑戦的研究である。研究代表者は革新的ながん治療法のため、「多因子で精密に目的細胞(癌)を特異化、治療できる」m-CRAという次世代ベクター作成法を開発した。この技術で特に、全癌種で高発現しているSurvivin遺伝子をプロモーターに用いたSurvivin反応性m-CRA(Surv.m-CRA)は、分化正常細胞を障害せずに癌細胞のみを強力に治療した(医師主導治験予定)。しかし正常ヒトES/iPS細胞の未分化状態でのSurvivinの役割は解析されていなかった。我々は本研究で、ヒトES/iPS細胞の未分化状態でのSurvivinプロモーター活性が予想に反し高レベルで、よってSurv.m-CRAがES/iPS細胞の未分化細胞も非常に特異的に殺傷できることを見出した。さらにin vivoでの細胞移植による奇形腫形成試験での詳細な評価も行ったところ、Surv.m-CRAでほぼ完全に腫瘍化発生を阻止できることまで見出した。よって、Survivinプロモーターはがん細胞だけでなく、未分化の正常細胞でも特異的に高活性化していること、よってSruv.m-CRAはヒトES/iPS細胞の未分化細胞を特異的に殺傷し、ヒトES/iPS細胞での再生医療応用における最大の問題の「腫瘍化」を阻止する新技術となることを、本研究で明らかにできた。成果は米国遺伝子細胞治療学会誌に論文発表し、Featured articleに選定され Editorialでも重要性を取り上げられた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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