研究課題
CD26は広範囲のヒトがん種において細胞膜表面に発現している。そこで独自に開発したヒト化抗CD26モノクローナル抗体(以下Ab)が、細胞表面CD26に反応するとCD26とともに細胞質内へエンドサイトーシスされ、さらに核内に移行することから、Abに抗がん分子を結合させることで、これらの分子をがん細胞の核内へ誘導し、副作用を抑えつつ、効率の良い新たながんの分子標的療法の開発を行った。アルキル化薬、白金化合物、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管阻害薬,抗腫瘍性抗生物質をAbに結合させ、アフィニティカラムにて精製した。この抗がん分子結合Abと非結合Abおよび抗がん分子を用いて、試験管内で各種ヒトがん細胞株を用いて、抗がん作用を増殖抑制能、細胞死誘導能を指標に検討した。その結果、代謝拮抗薬X結合Abが、Abのみよりも極めて高効率にCD26依存性にがん細胞の細胞死を誘導し、増殖能の極度の低下を示した。一方、CD26を発現する正常ヒト内皮細胞やTリンパ球では、同じAb-X濃度での増殖抑制や細胞死誘導は認められなかった。またこれらの効果は、X処理を単独行う場合の約1/5000~1/10000の濃度で示された。さらに、Ab-X結合分子がAb同様に、がん細胞核へ移行することが免疫電子顕微鏡的観察および共焦点レーザー顕微鏡観察で明らかとなった。またAb-X結合分子をマウスへ投与したところ、体内でのAb-X結合分子の半減期はAbとほぼ同様であり、異種移植したヒトがん(中皮腫、腎癌、リンパ腫)の増殖抑制能は、Abよりも強い効果が得られた。本Abは、核内移行だけでなく、細胞周期を抑制することでがん細胞の増殖を直接抑制する効果とともに、抗体依存性細胞傷害および補体依存性細胞傷害機構を介した免疫学的な抗がん作用もあることから、これらの様々な効果が抗がん作用として相乗・相加になることが期待される。
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