トキソプラズマ原虫はアピコンプレックス門に属する原虫であり、猫科動物を終宿主とする人獣共通感染症である。世界中で高い感染率を示し、妊婦が感染すると、流産や胎児の脳症、痙攣、水頭症、頭蓋内石灰化等を起こす。免疫抑制状態にある場合には重症化して死に至ることもある。ユッケやレバ刺しの食用等の近年の食習慣の変化に伴い、先天性トキソプラズマ症が拡大し、我が国の新生児において年数百件の被害があると推定され、患者会が設立された。このような状況の中、本研究の目的は、トキソプラズマの潜伏感染への誘導トリガー因子の同定、休眠型虫体のシスト壁の構造解析を通じて、この潜伏感染誘導機構の解明を行うことにある。 平成27年度は、トキソプラズマ原虫の休眠型への移行時に発現する遺伝子のプロモーターの下流に発光蛋白質遺伝子を挿入した組換え原虫を作製した。この原虫の発光の有無を指標として、休眠型への移行を抑制する薬剤のスクリーニング系を開発することに成功した。
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