本研究は、培養や単離精製をせずに寄生性原虫のゲノム情報を効率的に取得する手法として、感染宿主由来DNA から非感染宿主由来DNA を差し引き、その差分を超並列シーケンシングに供するサブトラクションシーケンス法を開発することを目的とした。 今回はゲノム配列既知の大腸菌および出芽酵母を用い、大腸菌DNA中に少量の出芽酵母DNAを混ぜたものを感染宿主由来DNA、単なる大腸菌DNAを非感染宿主由来DNAのモデルとした。2種類のDNAサンプルをそれぞれ断片化してからアダプタを付加したライブラリを作成し、非感染宿主由来のライブラリについてはPCRによってビオチン化を行った。両者を混合し、加熱変性の後に徐冷することで非感染宿主由来DNA同士をハイブリダイズさせ、ストレプトアビジン磁気ビーズによって除去した。両者の挙動を、それぞれのゲノム中でシングルコピーである、大腸菌dxs遺伝子および出芽酵母rps3遺伝子をマーカーとして定量PCRにより追跡し、感染宿主由来DNA(出芽酵母DNA)の濃縮を確認した。 本研究により、サブトラクションシーケンス法の原理的な実現性は実証できたと考えるが、実用化のためには宿主集団の遺伝的多様性の影響を評価する必要があり、今後引き続き技術的検証を進めていく予定である。
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