近年、東南アジアのサルに感染しているマラリア原虫Plasmodium knowlesi (Pk)がヒトに感染することが報告されているが、地域により血中感染率や症状が異なる。通常低い感染率を示すP. knowlesiが、ボルネオでは高い感染率でヒトに感染し、死亡する例も出ている。そのため、P. knowlesiのヒトへの感染性や強毒化する分子基盤を明らかにすることは重要な課題である。本研究では、ヒトの赤血球では長期培養ができないが、サルの赤血球では長期培養できるPk株に突然変異率を増加させる分子を遺伝子導入し、適応進化を加速することでヒト赤血球で効率よく発育できる原虫株を確立し、全ゲノム解析により責任遺伝子を同定する事を試みることを目的とした。 平成26年度は、ハーバード大学から培養に適応したPk株を入手し、培養条件を再度検討することで、安定的に長期培養を行うことができるようになった。確立した条件を用いて、培養株が存在しないP. knowlesiのHackeri 株について世界で初めて培養株化に成功した。P. knowlesi培養株への遺伝子導入も確立し、超加速変異型原虫作製用の遺伝子導入プラスミドの作製もほぼ終了したが、培養条件の確立に1年余りを費やしたため、本研究の期間内には超加速変異型原虫の解析にまで到達できなかったが、その基盤を整えることができた。
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