研究課題/領域番号 |
25670205
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
奈良 武司 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40276473)
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研究分担者 |
モラレス ホルヘ 順天堂大学, 医学部, 助教 (20596126)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 代謝経路 / 解糖系 / ペルオキシソーム / オルガネラ進化 / トリパノソーマ / ディプロネマ |
研究実績の概要 |
本研究は、寄生原虫トリパノソーマ類に存在するペルオキシソーム関連オルガネラ、グリコソームの起原とその進化プロセスを解明することを目的とする。グリコソームは、解糖系10酵素のうちの初段7酵素や他の代謝経路酵素群を含む。代謝経路のオルガネラ移行はミトコンドリアや色素体などの細胞内共生体に由来する代謝経路以外には見つかっておらず、その進化原理の解明はトリパノソーマの進化のみならず代謝経路の適応進化を理解する上でも重要である。これまでの研究から、トリパノソーマ類と共通祖先を持つディプロネマDiplonema papillatumは培地中のグルコースを消費せずアミノ酸を優先的に取り込むこと、解糖系第3酵素ホスホフルクトキナーゼ(PFK)の活性を持たないこと、PFKを除く解糖系初段6酵素がペルオキシソームに局在することを明らかにしている。本年度は、D. papillatumにおける代謝基盤の解析を実施した。13Cグルタミンを用いたトレーサー実験の結果、グルタミンは直ちにTCA回路に取り込まれ、糖新生経路(解糖の逆行)を辿りペントースリン酸経路の基質となることが明らかとなった。一方、13Cグルコースはほとんど取り込まれず、わずかに取り込まれたグルコースはペントースリン酸経路で代謝されていた。D. papillatumが補食性の原生生物であることを考えると、餌となるバクテリアや原生生物にはフリーのグルコースはほとんど含まれず、アミノ酸が主たる炭素源であり、栄養成分への適応として解糖系に依存しない代謝基盤が成立したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は極めて順調に進み、当初予定していた研究についてはほぼ全て実施することができた。また、研究が進んだことにより解糖系酵素のペルオキシソーム移行の合理的解釈に向けて更なる解析の必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
D. papillatumにおける代謝基盤をさらに詳細に解析し、13Cグルコースだけでなく、同位体ラベルしたアミノ酸を用いたトレーサー実験によって糖代謝の全体像を把握することによってD. papillatumの代謝基盤の全貌を明らかにするとともに、トリパノソーマ類のグリコソームがどのような進化プロセスで成立したのかを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究助成金については研究計画全体を見通した上で経費を配分することが可能となったため、年度単位の経費使用を遵守しつつも無駄を極力排除した結果、当該助成金が生じた。次年度以降については当該助成金を計上し、研究費の無駄な支出を排除しつつ柔軟に運用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
D. papillatumにおける代謝基盤をさらに詳細に解析し、13Cグルコースだけでなく、同位体ラベルしたアミノ酸を用いたトレーサー実験によって糖代謝の全体像を把握することによってD. papillatumの代謝基盤の全貌を明らかにするとともに、トリパノソーマ類のグリコソームがどのような進化プロセスで成立したのかを解明する。
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